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第16回日本循環器病予防セミナー参加記
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竹内 宏
第16回日本循環器病予防セミナー(日本循環器管理研究協議会、日本心臓財団主催)が7月6日〜11日に湘南国際村センターを会場に開催された。本セミナーは、脳卒中、心臓病など循環器疾患の疫学と予防法を学ぶもので、毎年一回開催され、今年で16回目となる。全国から、予防医学や循環器疾患診療に携わる医師、大学院生、研究生、コメディカル約50名が公募され、私は札幌医大・島本和明教授の推薦をいただき、また、北海道心臓協会の助成金を受け参加することができた。
高齢化社会の到来を迎え、日本の医療において脳卒中、心疾患といった循環器疾患の対策が、ますます重要になることには疑いの余地がない。近年、循環器領域においても、高度医療技術の発達は目覚しく、かつては救命できなかった重篤な疾病も急性期をしのぎ、社会復帰させることも可能となってきた。しかし、たとえ救命され得たとしても後遺障害を残し、介護人生を余儀なくされる高齢者が増加しているのも事実である。また、将来の心血管事故につながる生活習慣病が加齢とともに順次発症し、加齢とともにその数を増やし、高齢期には多疾患保有者の爆発的増加が指摘されている。このような有病者をいかにして心血管事故から予防するか、また、いかにして疾患の軽症化をはかり介護人生を回避するかはこれからの医療の大きな課題であると考えられる。そのような認識から「心臓病の二次予防」をメインテーマに今回の循環器病予防セミナーは行われた。
このセミナーの受講生は、医師、歯科医師、薬剤師、コメディカル等と様々な分野の方々で、また、講師陣は循環器疾患の予防医学に関する各分野の第一人者である。これら講師と受講者は5日間寝食を共にしてセミナーを行う。講義は朝8時30分より午後6時過ぎまで続き、夕食後は、各グループに分かれて演習を深夜まで行うという非常に濃い内容であった。
疫学方法論、循環器予防に関する示唆、また、予防指標としてのBNP、予防的治療としてのβブロッカーを大きなテーマとして講義が開かれた。予防医学の基礎から、実際の臨床に直結する話まで幅広い内容であった。臨床医として予防医学にどのように携わって行くべきか、予防医学の知識をもって自分の目の前にいる患者にどのように接するべきか深く考えさせられた。
講習と並行しこのセミナーではグループ演習なるものがある。このグループ演習は疫学研究をどう実践していくかを学ぶもので、毎晩深夜までグループ内で活発な議論が交わされた。このグループ演習により疫学方法論をより深く理解することができ、また、全国の予防医学を目指す受講生と親交を深めることができた。
この5日間は私のこれからの医師として、また、予防医学を目指すものとしての非常に重要なステップとなったと感じている。
最後にセミナー参加に当たり、助成をしていただきました北海道心臓協会に対し心より厚く御礼申し上げます。