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第15回日本循環器病予防セミナーに参加して
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近年、先進諸国における循環器疾患の多発に対し、健康人を循環器疾患から予防するという観点から、疫学・予防研究分野の重要性が叫ばれている。時機よく、7月14日〜19日に石川県片山津加賀温泉ホテルを会場に開催された第15回日本循環器病予防セミナー(日本循環器管理研究協議会主催、日本心臓財団後援)に、北海道心臓協会の助成金を受け参加することができた。
本セミナーは、脳卒中、心臓病など循環器疾患の疫学と予防法を学ぶもので、毎年一回開催され、今年で15回目となる。全国から、予防医学や循環器疾患診療に携わる医師50名が公募され、私は札幌医大・島本和明教授の推薦をいただき参加できた。講師陣は循環器疾患の予防医学に関する各分野の第一人者で、これら講師と受講者は約1週間寝食を共にしてセミナーを行った。講義は朝8時30分より午後6時過ぎまで続き、夕食後は、各グループに分かれて演習を深夜まで行うというハードなものであった。
厚生省死因統計によれば、1981年以降、日本の死因の第1位は悪性腫瘍、第2位、第3位は心疾患と脳卒中である。高齢化社会の到来を考えれば今後、日本の医療において脳卒中、心疾患といった循環器疾患の対策が、ますます重要になることは疑いの余地がない。
近年、循環器領域においても、高度医療技術の発達は目覚しく、かつては救命できなかった重篤な疾病も急性期をしのぎ、社会復帰させることも可能となってきた。しかし、多くの患者はたとえ救命され得たとしても後遺障害を残し、何らかの制約を負っている例が多いのが現状である。循環器疾患の予防が広がることにより疾患の軽症化が計られ、予防と一体となった治療こそがこれからの医療の課題であると考えられる。私はこの分野に重要性を感じ、これから探求していきたいと考えていた。幸運にもこのセミナー参加の機会が与えられ、期待に胸を膨らませつつ金沢へ向かうこととなった。初日の歓迎パーティーで紹介された受講生は、若手医師から教授まで、また、コメディカル、歯科医師等と様々な分野の方々で、予防医学に携わる人がこれほどまでに多種多様なものかと感じた。
疫学方法論、ガイドライン、日本の代表的な疫学研究、また、これからの循環器予防に関する示唆、を大きく4つのテーマとして講義が開かれた。臨床医として予防医学にどのように携わって行くべきか、予防医学の知識をもって自分の目の前にいる1人の患者にどのように接するべきかという講義に私は深く反省させられた。予防医学の知識、その手法、実践のみにとどまらず医師として最も基本となることを教えられたのだった。
講習と並行しこのセミナーではグループ演習なるものがある。このグループ演習は予防医学の知識をどう実践していくかということを学んで行くものであった。
このグループ演習のおかげで、全国の受講生と親交を深めることができた。この1週間は私のこれからの医師として、また、予防医学を目指すものとしての非常に重要なステップとなったと感じている。
最後にセミナー参加に当たり、助成をしていただきました北海道心臓協会に対し心より厚く御礼申し上げます。