NO.7 |
北米心臓ペーシング・ 電気生理学会に参加して
(1−1)
旭川医科大学第1内科 飯田 康人
1999年5月12日から15日までの4日間、北米心臓ペーシング・電気生理学会(NASPE=North American Society of Pacing and Electro physiology)主催の第20回学術集会が、カナダのトロントで開催されました。
不整脈をテーマに
NASPEは、循環器疾患の中でも特に不整脈に関する分野をテーマとした学会ですが、医療関係者以外の方々には、学会の名称から不整脈関連の学会とは分かりにくいかもしれません。
心臓ペーシングとは心筋を電気刺激する手技で、その代表は体内式ペースメーカー(一般の方が普通に連想する心臓ペースメーカー)でしょう。また、心内腔の多部位での電位記録と、それらの部位での電気刺激を組み合わせた検査を心臓電気生理学的検査といい、不整脈の診断や重症度評価、薬効評価などに用いられています(体表面の特定の部位での電位記録が通常の心電図で、健康診断などで実際に受けた方も多いと思います)。
発表演題で多かった分野は、植込み型除細動器とカテーテルアブレーションに関するものです。心臓に短時間電流を流すことにより、異常調律を正常調律に戻すことを電気的除細動といい、時々テレビドラマなどでも心臓に電気ショックを加える場面が登場しますが、それが正に電気的除細動を行っているところです。
極めて危険な心室細動
心室細動という不整脈は電気的除細動を行わなければ分単位で死に至る極めて危険な不整脈ですが、それによる突然死を防ぐために作られたのが植込み型除細動器です。外見上は大きめの体内式ペースメイカーのような装置で、我が旭川医大付属病院でも第一外科の先生と協力して植込みを行っています。ただし、日本で使用できるのは一世代旧式なので残念です。
カテーテルアブレーションを大雑把に説明すると、超小型の電気メスを先端に備えたカテーテル(細長い管状または棒状の医療器具を総称してカテーテルといいます)を使用し、不整脈の発生源または不整脈の回路の一部となっている心筋を局限的に焼きつぶす治療です。
負担少なく成功率も高い
患者さんに対する負担が少なく成功率も高いため、また不整脈治療薬の効果の限界もあり、カテーテルアブレーションは急速に普及して来ていますが、生体に対する影響は不明な点も多く残されています。
私の研究テーマは、カテーテルアブレーションに伴う心臓自律神経機能への影響についてで、今後実験を発展させていく上で(実験は人でなく犬を対象にしています)参考になる発表も多くあり、非常に有意義でした。
*北海道心臓協会は「研究開発調査助成事業」により飯田氏に旅費補助を行いました。