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世界心臓核医学会に参加して
札幌医大第2内科 橋本暁佳さん
近年の循環器病学における診断学の進歩には目覚ましいものがありますが、心臓核医学の領域においても、年々新しい手法が登場し、臨床心臓病学にける核医学的アプローチの重要性は一段と増してきています。
ハード面での進歩により、今まで以上に診断精度が高まってきたことに加え、多施設による共同研究等によって、循環器疾患の診断上有用な様々な情報を提供しうることが分かり、日常臨床への適応の範囲は大きく広がっています。
例えば、従来広く行われている心筋の血流状態をみる画像診断の一つであるタリウム心筋シンチグラフィは主に虚血性心疾患の診断に用いられていました。冠動脈の血管再建術(カテーテル・インターベンション、バイパス手術)が有力な治療法として確立している現在では、治療方針の決定に際し、このような核医学的検査による心筋の生存性(心筋梗塞後に生き残っている心筋の状態)の評価が、不可欠な検査となっています。
最近は、治療効果の判定や治療後の心機能予測、さらには心臓病の患者さんの重症度や生命予後の推定さえ可能であることが報告されています。
この度、私は、平成11年4月18日から21日の間、ギリシャのアテネにおいて開催された第4回世界心臓核医学会に参加し、この分野における最先端の研究成果を知るだけでなく、世界中の心臓核医学研究を専門としている臨床家と直に接する機会を得ることが出来ました。
この学会は循環器科医だけでなく、放射線科医、核医学医、放射線科技師の参加もあり、心臓核医学の専門の学会としては最大規模のものです。今年の参加者は約千人で、日本からも百人近くの参加がありました。一般演題468題に加え、数多くのシンポジウム、各種教育講演等、多彩なプログラムが催されていました。
特に興味深かったのは、心臓核医学研究の第一人者とされる著名な医師・研究者達が実際の症例を読影する形式で進められたシンポジウムでした。演者にも聴衆にも診断は伏せてあるため、両者が同じ目の高さで討論することができ、通常の国際学会とはひと味違ったリラックスした雰囲気の講演を経験することができました。
一般演題を含めた研究発表では、心電図同期心筋血流シンチグラフィ法の高い臨床的有用性がトピックスとして注目を集めており、特に冠動脈病変検出や心筋の生存性の評価に関して非常によい成績が得られたとする報告が多くみられました。これらの研究成果は、いずれも非常に実用的かつ臨床的な内容のものでした。
今回の学会で得た新しい知見を実際の医療現場で生かすことができ、また私自身、心臓核医学のもつ新たな可能性を追求していくことができれば、素晴らしいことだと思います。
*北海道心臓協会は「研究開発調査助成事業」により橋本さんに旅費補助を行いました。