NO.2 |
アメリカ心臓協会・第70回学術集会に参加して
北大医学部 循環器内科 山田 聡
北海道心臓協会は、循環器疾患の予防や治療のための調査活動をする医療関係者に補助金を支給する「研究開発調査事業」を平成9年度からスタートさせました。
今年度はアメリカ心臓協会の第70回学術集会に参加の北大医学部循環器内科・山田聡医師に旅費補助をしました。以下は山田医師の印象記です。1997年11月9日から12日までの4日間、アメリカ心臓協会(AHA:American Heart Association)の第70回学術集会がフロリダ州オーランドで開催されました。私は初めてこの学会に参加し、研究テーマとしている負荷心エコー法について発表する機会を得ることができましたので、今回のAHA旅行の印象について紹介させていただきます。
世界最大のリゾート・タウン
アメリカ南部フロリダ半島の中央に位置するオーランドは、温暖な気候に恵まれ、ウォルト・ディズニー・ワールド(WDW)をはじめとするいくつもの大きなテーマパークと無数のリゾートホテルが林立する世界最大のリゾート・タウンです。
雨期にはスコールもあり蒸し暑いようですが、今回訪れた11月は最高気温が25度程度で、雨もなく、とても過ごしやすい季節でした。このような大行楽地で好んで学術集会が開かれることも、アメリカらしく、うらやましく思います。
巨大な会議場に約4万人が参加
会場のオレンジ・カウンティ・コンベンション・センターは、端から端まで通り抜けるだけでも15分位かかってしまいそうな、実に巨大な会議場でした。
AHAは、北米放射線医学会に次いで世界で2番目の規模の学術集会だということで、今回は、前年より五千人ほど多い約4万人が参加したそうですが、それでもこの会議場の全ての部屋を利用しているわけではないようでした。いったい何のためにこんな大きな会議場があるのだろうかと、疑念を感じるほどでした。
学術集会では、一般演題として、口演発表とポスター発表を含めて4,290題の発表とそれに対する討論が行われました。これは、54カ国から応募された13,000余の抄録の中から選ばれたもので、採択率は33%ということになります。
さらに特別企画として、メイン会場で行われる13の本会議(プレナリー・セッション)や、14の記念講演、76のセミナー、24の賞の選定と表彰などなど膨大な数の企画が用意されていました。これらが恐らく数十の部屋で同時進行で行われますので、全部を聴くことは不可能なばかりか、配られたプログラムに目を通して自分が参加するセッションを決めるだけでも大仕事です。
あらゆる分野で最先端の報告
発表の内容に目を向けますと、循環器領域では世界最大の国際学会であるだけに、あらゆる分野で最先端の報告がなされていました。
臨床面では、心不全や虚血性心疾患に対する新しい薬物療法やインターベンションあるいは外科的治療の有用性の検討が、大規模臨床試験という形でいくつも進行しており、これらの結果が雑誌に掲載される前の段階で、あるいは中間報告として多数報告されています。
また、心血管系疾患をどのように予防することができるかという問題についても、やはり大規模臨床試験の新しい結果の報告がみられます。より効果的な予防・治療の方法を見い出すためには、このような大規模臨床試験が是非とも必要ですが、日本では体制が整っておらずなかなか施行できないため、海外でのデータに頼らざるを得ないのが現状です。
また、重症心不全に対する薬物療法、心移植の現状や問題点、さらに心移植に代わる人工心臓などの新しい方法についても、経済面を含めたあらゆる側面からの検討がなされていました。
医療機器展示会場も活況
多数の医療機器メーカーが参加する広大な機器展示会場も活況を呈しており、新しい診断装置や治療用器具、補助人工心臓などの展示もみられました。
会議は全般的に活気に満ちており、循環器医療の今後の発展に期待感を強めることができました。
さて、せっかくオーランドに丸4日間滞在したわけですから、学会終了後や合間を作っては、同行した3人の先生方とともにあちらこちらのテーマパークに出没しなければなりません。1日目はWDWのMGMスタジオで13階の高さから落下するエレベーターなどを体験、2日目はWDWのマーケットプレイスで買い物、その後和食レストランでワニ肉を体験、4日目はユニバーサルスタジオで3D映画を見て、キングコングが火を吹くケーブルカーに乗車した後、シーワールドでイルカのショーを見学、といった具合です。
なかには、さらにケネディ宇宙センターへのバスツアーに参加した先生もいらっしゃいました。とにかく、どこへ行ってもアメリカ的なスケールの大きさと、アトラクションの魅力を堪能することができます。現在拡張工事中のテーマパークも多く、大リゾート地オーランドの発展はまだまだ続きそうです。学会でも、観光でもアメリカの活気のようなものを感じ取って帰国しましたが、私自身も新たな気分で今後の診療や研究に臨みたいと思います。