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NO.142

日本薬学会第146年会

北海道医療大学大学院薬学研究科
博士課程 杉山 太己 氏

杉山太巳氏

 令和8年3月26日から4日間、関西大学千里山キャンパスにて日本薬学会第146年会が開催され「拡張期高血圧モデル培養血管平滑筋細胞でのインターロイキン-1β刺激によるシクロオキシゲナーゼ-2発現増強作用メカニズムの探索」という演題を発表いたしました。

 高血圧は日本において最も有病率の高い疾患であり、心血管疾患の主要な原因疾患です。現在の高血圧治療は、生活習慣の改善による降圧を主として、その補助として降圧薬の併用を推奨しています。しかしながら多くの高血圧患者は、降圧薬による対症療法にとどまり、生活習慣の改善による原因療法が十分に実施されていないのが現状です。これらのことから、生活習慣の改善以外の根本的な高血圧治療法の確立が求められています。その実現には高血圧の病態における分子メカニズムの解明が不可欠です。筆者の所属する研究室では、負荷圧力の上限と下限を自由に設定でき、設定範囲内で内圧が周期的に変動する圧力(波動圧力)を培養細胞に負荷可能な装置を開発しました。この装置を用いて、高血圧を想定した波動圧力を培養血管平滑筋細胞(VSMCs)に負荷し、高血圧モデルVSMCsを構築することで、高血圧環境下におけるVSMCs機能変化を明らかにすることを目的に研究しています。

 筆者は昨年の日本薬学会第145回年会にて、ラットVSMCsにおいて拡張期高血圧を想定した波動圧力負荷がインターロイキン-1β(IL-1β)刺激によるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)発現誘導を増強することを報告しており、本学会では、この圧力負荷が有するCOX-2発現誘導増強作用のメカニズムを探索し、発表いたしました。

 IL-1βは、高血圧患者および高血圧モデル動物において血中濃度の増大が認められており、VSMCsにおいて血管拡張物質を産生するCOX-2の発現を誘導することが知られています。IL-1β刺激によるCOX-2発現誘導には、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)やNF-κBなどの活性化が深く関与しており、特にVSMCsにおいては細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)およびNF-κBの活性化が必須の経路となります。

 拡張期高血圧モデルVSMCsにおけるIL-1β刺激によるMAPKの活性化を検討したところ、正常VSMCsと比較してERKの活性化が圧力負荷開始後10分、30分、6時間において有意に増強されました。VSMCsにおいてはNF-κBはERKの下流に位置することから、次にNF-κBの活性化を検討したところ、同様に10分、30分、60分、10時間において有意に増強されました。したがって、拡張期高血圧を想定した波動圧力負荷に伴うIL-1β刺激によるCOX-2発現誘導増強には、ERK-NF-κB経路の活性化増強が深く関与していると示唆されました。本学会で発表した結果は、高血圧における分子メカニズムの解明の一助になるものと考えています。発表中には、複数の他大学の学生や先生方から興味深い質問や助言をいただき、分野の近い研究者との議論を行うことができました。これらはこれからの研究に役立つ貴重な経験になると確信しております。最後に学会参加に際して、助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。


  
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