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NO.140

第70回日本透析医学会学術集会・総会

札幌南一条病院
臨床検査技師 伊東 和佳子 氏

伊藤和佳子氏

 この度、2025年6月27日から29日に大阪で開催された第70回日本透析医学会学術集会・総会に参加および発表の機会をいただきました。

 本学術集会は国内外の多職種の医療関係者、研究者が一堂に会し、熱意のこもった議論と意見の交換がなされる年に1度の大規模な学術イベントです。今回は「いのち輝く未来社会の透析医療」をテーマに多様な視点から透析医療の“今”と“未来”を探究する場となりました。

 私は、本学術集会において「血液透析にともなう血圧変動に寄与する自律神経活動の評価」という演題で発表させていただきました。

 透析患者の血圧の日日変動(透析開始前の血圧の変動)の増大は、死亡リスクの上昇と関連することが複数の研究グループから報告されています。また、最近では透析前だけでなく透析中の血圧変動も死亡率と関連することが報告されており、透析操作による血行動態の変化のほか、慢性腎不全や併存疾患による自律神経障害および心血管障害が関与すると考えられています。

 しかし、自律神経障害が一人一人の患者の血圧変動にどの程度関与しているのか、他の病態とどのように関連しているかは十分明らかにされておらず、血圧変動に対して自律神経障害をふまえた治療法は確立されていません。

 今回の研究では、ホルター心電図を用いて心拍変動の解析を行い、透析患者における透析時の血圧変動に自律神経がどのように関連しているかを解析しました。

 解析対象は当院入院中の維持透析患者34名で、ホルター心電図を透析前日あるいは当日に装着し、透析開始前、開始後1時間ごと、透析終了後の各時点における自律神経活性指標と収縮期血圧変動との関連を解析しました。自律神経活性指標として、副交感神経活動を反映する高周波領域のHF、交感神経と副交感神経両方の活動を反映している低周波領域のLF、また、交感神経活性の指標としてLF/HFを用いました。血圧変動の指標としては、標準偏差(SD)、変動係数(CV)を用いました。

 結果は、収縮期血圧の標準偏差(SD)を目的変数とした重回帰分析では、性別、年齢に加え透析前のLF/HFが有意な説明因子として採択され、回帰モデルの寄与率(R2)は0.402でした。

 これはSDのばらつきの約4割はこれらの因子で説明できることを示しています。収縮期血圧の変動係数(CV)を目的変数とした分析でも、透析前のLF/HFは性別と年齢とは独立した有意な説明因子であることが示されました。

 今回の結果は、透析前の交感神経活動が透析中の血圧変動を規定する因子の一つであり、その亢進が血圧変動を増大させている可能性が示唆されました。

 今後は透析患者で最も重要な死因である心臓突然死との関連も含め、さらに研究を発展させたいと考えております。また、透析患者の予後の改善に向けた研究と議論が継続されることで本学術集会のテーマ「いのち輝く未来社会の透析医療」の実現に、さらなる前進が期待されます。

 最後になりますが、この度は本学術集会参加にあたり助成をしていただきました、北海道心臓協会の関係者の皆様に心より御礼申し上げます。


  
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