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NO.137 |
米国心臓協会 Scientific Sessions 2024
札幌医科大学大学院医学研究科
大学院生 川原田 航氏
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この度アメリカ・シカゴにてAHA Scientific Sessions 2024にポスター演者として参加させていただきました。函館市とほぼ同緯度に位置するシカゴ市はwindy cityとも称され冬の厳しい寒さで有名ですが、幸いにも私達が訪ねた際は同時期の北海道より暖かく穏やかな気候に恵まれました。会場は非常に広大かつ煌びやかで本学会の規模の大きさ、重要さを再認識しました。
今回発表させていただいた演題(『心不全患者の骨格筋脂肪化を介した身体機能低下の検出における腹部CTと血漿アミノ酸プロファイルの有用性』)について簡単に紹介させていただきます。慢性心不全患者の多くに合併するサルコペニアは生命予後や生活の質に関連する重要な併存疾患です。しかし、診断には身体機能評価や二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による筋量測定が必要であり、その評価が広く普及しているとは言えません。また、病態も明らかではなく有効な介入点も不明な点が多い状況です。そこで今回、心不全患者におけるより簡便なサルコペニア診断法の確立を目指し、身体機能とCTでの筋肉の量・質(mean muscle attenuation(MMA):筋肉内の平均CT値)および血漿アミノ酸との関連を検討しました。CTは日常診療で多目的に撮像され、汎用性が高いという利点があります。まず、第3腰椎レベルのCT断面での骨格筋、脂肪量はDXAでの評価と強い相関を示すことを確認しました。興味深いことに、身体機能の低下は筋肉量よりも筋肉の質的変化と強く関連しており、MMA低値群で低身体機能の有意なオッズ比上昇を認めました。さらに、血清アルブミン濃度および、肝機能の指標として知られるフィッシャー比(分岐鎖アミノ酸と芳香族アミノ酸の比)の低下が、MMAの低下および低身体機能と有意に関連することを見出しました。このことから、心不全による肝機能低下やアミノ酸を中心とした栄養障害がサルコペニアの病態に関与し、治療標的となる可能性が示唆されました。想像以上に多くの参加者や質問者がブースを訪れ、活発な議論を交わすことができました。関心を持ってくださる人が多かったことは非常に嬉しく、今後の研究の励みになりました。
滞在中には現在シカゴのノースウエスタン大学ファインバーグ心血管腎研究所に留学中の同門の大和田先生を訪問し、主任研究者であるArdehali教授との研究カンファレンスに参加するという貴重な機会をいただきました。総じて、学会のみならず非常に有意義な時間を過ごせたと実感しております。
最後になりますが、この度の学会参加に際し助成を賜りました北海道心臓協会の関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

