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NO.136

第8回 日本循環器理学療法学会学術大会

市立病院リハビリテーション部
理学療法士 杉浦 宏和氏

 この度、2024年11月23日から24日に宮城県仙台市の仙台国際センターにて開催された第8回日本循環器理学療法学会学術大会に参加させていただきました。私は「高齢心臓外科手術患者における入院関連能力低下と予後との関連」という演題を発表させていただきましたので、ここに概略を述べさせていただきます。

 近年、手術技術や周術期管理の進歩に伴い、より高齢で併存疾患の多い患者にも手術適応が拡大してきていることから、高齢患者においては術後リハビリ進行が遅延し、退院時の日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)が術前のADLと比較して低下したまま退院する方も少なくありません。入院加療に伴うADL低下は、入院関連能力低下(Hospitalization-Associated Disability:HAD)と呼ばれ、高齢心臓外科手術患者の20%前後に発症することや、HADを発症すると遠隔期の予後が不良となることが明らかとなっています。多くの先行研究では、ADL評価バッテリーの1項目以上が減点した場合を一元的にHADと定義して解析がされております。一方で、高齢心臓外科手術患者は、複数のADLが障害されることが多く、HADには重症度があることが推察されますが、HADの重症度と予後との関連は明らかとはなっておらず、今回検討させていただきました。

 当院にて心臓外科手術を施行された141例を解析対象とし、ADL評価バッテリーの一つである機能的自立度評価表(Functional independence measure:FIM)の低下項目数に応じて、非HAD、軽症HAD、重症HADに分類して検証しました。主要エンドポイントは、退院後2年以内の主要脳心血管イベント(MACCE)としました。結果、中央値730日の観察期間でMACCEは23例(16.3%)に認め、Kaplan-Meier法によるイベント回避率(非HAD vs 軽症HAD vs 重症HAD)は、88% vs 78% vs 53%でした。年齢、性別、左室駆出率、身体的フレイルなどで調整した多変量Cox比例ハザード分析の結果、軽症HADは関連を認めず、重症HADのみが独立して関連しました。

 以上より、高齢心臓外科手術患者における予後予測は、HADを一元的に評価するのではなく、その重症度を考慮することが重要であり、リハビリによりHADを予防することが予後改善に寄与できる可能性が示唆されました。

 末筆ではありますが、本学会への参加にあたり、研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。


  
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