サルコペニアは加齢に伴う全身の骨格筋量や筋力、身体機能の低下を特徴とした症候群であり、健康寿命や生命予後の悪化と密接に関連するため、重要な治療対象です。AWGS(Asia working group for sarcopenia)は、アジア人におけるサルコペニア診断基準を2014年に提唱し、2020年に改訂しました。主な改訂として、握力や歩行速度のカットオフ値を基準緩和したこと、身体機能評価に5回椅子立ち上がりテストやSPPB(Short physical performance battery)を利用可能としたこと、更には骨格筋量を身長で補正する方法の代替案としてBMIで補正する方法を推奨しました。地域在住高齢者ではこれらの基準改訂による予後予測能の有効性が示されましたが、心不全患者で検証した例はありませんでした。今回、当院に入院した高齢心不全患者534例に対し、AWGS基準改訂前や改定後に基づいて分類し、診断能や全死亡に対する予後予測能を比較検証しました。