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NO.130

第88回日本循環器学会学術集会

札幌医科大学附属病院リハビリテーション部
くぬぎ原 勇人氏

 この度、兵庫県神戸市の神戸コンベンションセンターにて2024年3月8日から10日に開催された第88回日本循環器学会学術集会に演者として参加させていただきました。「運動療法と栄養療法の併用により身体機能が改善した静注強心薬投与中の重症心不全の1例」という演題で発表させていただきましたので、以下にその概要を記載致します。

 このような、静注強心薬が投与された重症心不全患者は心臓リハビリテーションガイドラインにおいても推奨クラスUb、エビデンスレベルCと報告されており、運動療法の有効性は明確ではありません。このことから、臨床でこのような症例を担当した際に果たして早期に離床しても大丈夫なのか、運動療法の効果が本当にあるのかと考えることが度々あります。このため、本症例では運動療法と栄養療法を併用することで身体機能が改善した症例を経験し、その報告を行いました。

 本症例は、60歳代、男性でアパートの2階部分で生活をしていました。入院前は散歩や、花の写真撮影など、活動的な生活を送り1日に約5000歩を歩いていました。その後、徐々に腹部の膨満感や下腿浮腫などの心不全症状が出現し、心不全急性増悪と診断され他院へ入院しました。そこで心不全治療が行われましたが、強心薬であるドブタミン(DOB)の離脱が困難であったことから経皮的僧帽弁接合不全修復術(TEER)、両室ペーシング機能付植込み型除細動器(CRT-D)植え込み精査目的で当院に転院しました。転院後はDOBを5.4γまで増量し、ミルリノンも0.1γ併用して血行動態の安定化を図りました。初期評価では筋量減少(四肢骨格筋指数:6.5s/u)、低身体機能(歩行速度:0.59m/秒、SPPB:8点)、低筋力(握力:右23.8s/左24.3s)であり重症サルコペニアでした。離床プログラム後に、筋力トレーニング、歩行運動、身体活動量管理を組み込みました。また、蛋白質摂取量は0.82g/s理想体重(IBW)/日であり、推奨量の1.2g/sIBW/日以上を目標に栄養摂取量の増大を図りました。

 結果としては、第19病日にTEER、第31病日にCRT-D植え込み術を施行し、第67病日にDOB、第77病日にMilを離脱しました。蛋白質摂取量は退院前までに1.33g/sIBW/日と目標水準に到達しました。最終評価では、歩行速度は1.36m/秒、SPPBは11点となり、いずれも臨床的最小重要差(歩行速度:0.1m/秒、SPPB:1点)を超えて改善しました。身体活動量は6237歩/日となり、入院前の水準(≧5000歩/日)に達し、第86病日に前医へ転院しました。

 本報告で得られた知見は、静注強心薬投与中の心不全患者でも運動療法に栄養療法を併用することで身体機能が改善することが示唆されました。また、このような心不全患者において、多職種でディスカッションを行いながら理学療法を行うことが有益であると考えられます。

 最後になりますが、この度は本学会への参加にあたり助成をしていただいた、北海道心臓協会の関係者の皆様、先行委員会の方々に深く御礼申し上げます。


  
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