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第59回日本小児循環器学会・学術集会
北海道大学大学院医学研究院小児科学教室
大学院生 丸尾 優爾氏
この度、北海道心臓協会の研究開発調査助成をいただき、2023年7月6日から7月8日に横浜で開催された第59回日本小児循環器学会・学術集会に参加させていただきました。
本学会は、小児および先天性の心疾患について、全国の小児科医、外科医、コメディカルの方々が参加し、様々な角度で討論を行う年1回の大規模な学術集会です。小児だけでなく、胎児期の心疾患に関する発表から、生まれつきの心臓病を持ち成人となられた成人先天性心疾患患者をテーマにした発表も数多くみられ、さらに臨床だけでなく基礎研究に関する発表もあり、非常に充実した学会でした。
今回、「アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬およびβ遮断薬の高用量使用が有効であった乳児の拡張型心筋症(DCM)4症例の検討」という演題名で発表させていただきました。
DCMは、明らかな原因がなく心室が拡張し、心機能が低下し心不全を呈する予後不良な疾患です。今回、ACE阻害薬、β遮断薬の高用量使用が有効であった乳児DCMを4症例経験したため、その臨床的特徴や経過について報告しました。
小児におけるACE阻害薬、β遮断薬の通常用量の上限は、概ね小規模な臨床研究などに基づき、シラザプリル0.04r/s/日、エナラプリル0.4r/s/日、カルベジロール0.4r/s/日とされています。成人の領域ではACE阻害薬の高用量使用による有効性が報告されており、薬剤の忍容性がある限り増量することが試みられております。
またβ遮断薬については用量依存性があり、成人における高用量使用の有効性が報告されております。その一方で、小児、特に乳児のDCMに対するACE阻害薬、β遮断薬の至適投与量については不明な点が多いです。今回の報告では、通常用量のACE阻害薬、β遮断薬では効果がなかったものの、高用量使用によって実際にどのようにDCMが改善していったのかということを詳細に示しました。ACE阻害薬、β遮断薬の高用量使用が、乳児DCMに対して有効な治療となる可能性を秘めており、今後同様の症例が蓄積されてくる可能性もあり、そのような意味でも貴重なケースシリーズであり、本学会で報告させていただきました。今後症例を積み重ね、さらなる検証をすすめていきたく考えております。
最後になりますが、本学会参加にあたり助成をしていただきました、北海道心臓協会の関係者の皆様、選考委員の先生方に深く御礼申し上げます。