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第50回日本放射線技術学会秋季学術大会
JR札幌病院 放射線技師
石川 剛氏
2022年10月7日から3日間にわたり東京都で第50回日本放射線技術学会秋季学術大会が開催されました。私はMRI装置を用いて、『Cine cardiac imagingから解析された収縮能と拡張能は高い心不全の検出能力を有するか?』と題し研究発表をしました。
Cine cardiac imagingとは検査時に心電図を貼り、心電図(心臓の動き)に合わせて撮影していくことで、動いている心臓を動画撮影する方法です。動いている心臓の画像を解析すると、見た目だけではなく詳細な心臓の機能を数値として示すことが可能です。
心臓は縮むことによって貯めた血液を全身に送り出すポンプのような役割を担っており、この縮む力を“収縮能”といいます。また、心臓が膨らみ血液を貯める力を“拡張能”といいます。どちらの力もとても重要で能力が下がってしまうと全身に十分血液を送ることが出来ません。
私の今回の発表の要旨は心臓MRI検査を行った正常心機能の方から当院における収縮能と拡張能の正常値と標準偏差を導き出し、その値よりも低下した値を示した患者が実際に心不全であったかを調べるというものです。
対象患者は当院で心臓MRI検査を受けた連続48症例で、その中から不整脈や腎不全の患者を19症例除き、血液検査とエコー検査で正常心機能患者であった7症例、軽度心機能低下患者7症例、重度の心機能低下患者15症例に分類しました。
心臓MRIの解析ソフトにより得ることが出来た左室駆出率(Ejection fraction)と最大駆出速度(Peak ejection rate)を収縮能の指標として用い、最大充満速度(Peak filling rate)を拡張能の指標として用いました。結果として正常心機能患者と重度の心機能低下患者全てにおいて的確に心不全の有無を抽出可能でした。
軽度心機能低下の患者では2症例において拡張能の低下がみられました。この2症例について基礎疾患を調べていくと高血圧が背景疾患にあったことがわかり、既出論文に『拡張能の低下は高血圧性が原因である』という記載があることから、拡張能のみの低下は高血圧性心不全の抽出が可能であることが示唆されました。
末筆ではございますが、この度の学会参加にあたり、研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会様に心より感謝申し上げます。