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NO.120

第70回日本心臓病学会学術集会

北海道大学大学院循環病態内科学教室
大学院生 橋 勇樹氏

 第70回日本心臓病学会学術集会が京都府で2022年9月23日から3日間にわたり開催されました。

 私は本学術集会にて、「心尖部アプローチ経カテーテル的大動脈弁置換術後に急激な左室収縮障害の進行を認め、組織診断で慢性心筋炎の診断に至った一例」という演題を発表させていただきました。

 本症例は80歳代男性で、心不全に至った重症大動脈弁狭窄症に対して心尖部アプローチ経カテーテル的大動脈弁置換術(TA-TAVI)を施行しました。多くの場合TAVIは大腿動脈や鎖骨下動脈からアプローチしますが、本症例は胸腹部大動脈の動脈硬化が強く人工弁を通過させる際の刺激でプラークや血栓が飛び、脳梗塞などの重篤な合併症を生じる危険性が考えられたため、心尖部アプローチを選択しました。周術期は大きな合併症なく経過し術後2週間で自宅退院となりましたが、術後4か月で左室収縮能の急激な低下(左室駆出率59%→26%)を認めました。

 原因精査のため心筋生検を行ったところ、心筋内への炎症細胞浸潤と線維化を認めました。また免疫染色では線維化の強い部位に一致してテネイシンC陽性を認め、これらの結果から慢性心筋炎の診断に至りました。

 慢性心筋炎は、一般的には急性心筋炎が遷延して心筋障害と左室収縮障害を引き起こす病態と考えられていますが、本症例においては急性心筋炎を示唆する明らかな病歴はなく、心尖部への外科的侵襲が契機となって心筋の炎症を引き起こした可能性が否定できない一例でした。これまでTA-TAVIをはじめとした外科的侵襲により慢性心筋炎をきたしたという症例報告はなく、貴重な症例経験として報告させていただきました。

 今回日本心臓病学会学術集会にて本症例を発表し全国の研究者たちとディスカッションすることができました。今回の症例報告が今後の循環器診療の一助となればと考えております。

 末筆ではございますが、本学会参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。


  
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