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NO.115

European Society of Cardiology Congress 2021 欧州心臓病学会

北海道大学病院小児科
医員 永井 礼子氏

門坂崇秀氏

 この度は、European Society of Cardiology Congress 2021参加にあたりまして、北海道心臓協会研究開発調査助成に採択いただき、まことに光栄に存じます。一般財団法人北海道心臓協会の関係者の皆様、選考委員の先生方に深く御礼申し上げます。

 今回発表した演題のタイトルは“A rare nonsense variant of the X-gene in a paediatric patient with severe peripheral pulmonary stenosis”です。

 本研究では、重篤な多発性末梢性肺動脈狭窄症(PPS)の原因が遺伝学的背景によるものかどうかの検証を試みました。重症PPSの患児において全エクソーム解析を実施し、疾患原因候補としてX遺伝子の希少ナンセンスバリアントを同定しました。

 X遺伝子は血管平滑筋細胞の増殖抑制作用および肺動脈拡張作用を有するYの生成に関与しており、また、肺動脈性肺高血圧症の疾患原因遺伝子として報告されていることから、この変異はPPSの原因となりうると判断し、機能解析を実施しました。

 その結果、変異型X遺伝子はヒト肺動脈内皮細胞において、野生型X遺伝子と比較して、有意な細胞増殖能の亢進、アポトーシスの抑制を惹起し、さらにYの産生量を有意に低下させることをあきらかにしました。

 患児の尿検体では、健常者コントロールと比較してY代謝産物の著明な減少が確認され。さらに、患児自身の肺病理検体においては肺動脈内膜におけるY発現量の低下、肺内肺動脈内膜の不整な肥厚が認められ、これらは機能解析結果を支持するものと考えられました。

 他疾患においてYを補充する薬剤が既に実臨床において使用されていることからも、この研究結果はPPSの内科的治療法の創出につながることが期待されると考えました。

 残念ながら、COVID19の世界的な流行により、ESCCongress2021は完全Web開催となってしまいましたが、いい緊張感をもって参加することができました。

 国外からの、他の肺動脈に関連する演題からも大いに刺激を受けた結果、現在は国内外のPPS症例を追加して集積し、X遺伝子についてより詳細な解析を試みています。今後、しっかり論文化し、臨床現場に還元できるように、鋭意努力していく所存です。


  
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