NO.105 |
欧州心臓病学会 学術集会
函館五稜郭病院 リハビリテーション科
理学療法士 下村 佳奈子氏
2019年8月31日から5日間にわたり、パリで行われたESC Congress Paris 2019に参加し、ポスター発表(演題名:Low energy intake predicts readmission of elderly heart failure patients independently of nutritional status)を行いました。
近年、心不全治療においては運動療法とともに食事療法、特に栄養療法が重要であると言われております。しかし、栄養状態の評価法やそれに基づく管理については日本ばかりではなく、欧米においても未だに確立されておりません。そのような背景から、昨年には日本心不全学会より「心不全患者における栄養評価・管理に関するステートメント」が発表され、心不全における栄養状態・栄養アセスメント・栄養療法まで幅広い内容が提言として示されました。この提言の中で、栄養療法は心不全に対するチーム医療の一つとして位置付けられ、今後の心不全治療において栄養療法・栄養評価は欠かすことのできない重要なアプローチ方法であるとの認識が一層高まったと感じております。今後、栄養状態の評価法や栄養状態に基づいた管理方法を確立させていくことは、我々心不全治療に携る医療従事者にとって急務であると思われます。
私は、低エネルギー摂取が高齢心不全患者における再入院の予測因子であるかどうかを検討し、発表させていただく機会を得ることができました。今回の研究で得られた、“退院時における低エネルギー摂取は栄養状態に関わらず、高齢心不全患者における1年再入院率を予測する因子となる”という結論に対し、質問者からは退院時の食事摂取量が高かった群と低かった群はどのように定義し2群分けしたのかという質問や、高齢心不全患者の再入院率を下げるためには、やはりたくさん食べることが重要であるのかという質問をいただきました。これらの質問をいただき、私自身改めてどのように定義付けするかという点や、要点をより簡潔且つ明確に示すことの重要性を学びました。
私にとって初めての国際学会への参加ですが、過去に参加してきた国内での循環器関連の学会と同様に参加者の割合としては医師が多く、発表されている内容も自分の知識に対して大変難しく、細胞単位での変化や循環動態の複雑な生理的機序を説明する発表を理解するには人体組成や臓器のしくみについて、今よりももっと深く理解することが必要だということも強く感じました。
本学会では世界中の病院やクリニック、その他施設で働く方々が、臨床に従事しながらも臨床場面からデータを収集・蓄積し、新たな知見について発表・議論されており、臨床と研究を並行して行っていき、臨床を更によりよいものにするという医療従事者としての姿勢を示されていたように感じました。
最後になりましたが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。