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日本核医学会総会
北海道大学大学院医学研究院 画像診断学教室
古家 翔氏
2019年11月1日〜11月3日の期間で愛媛県(松山市、コミュニティセンター)にて日本核医学会学術総会が開催されました。私は「心臓サルコイドーシス病変をFluoro deoxy glucose(FDG)-Positron emission tomography(PET)で評価する際にヘパリンは必要か?」という内容で後ろ向き研究を発表しました。
心臓サルコイドーシスの診断と活動性評価にFDG-PETが有用であることは示されており、保険適用にもなっています。
しかし、病変以外の正常心筋にもFDGが集積し、偽陽性となるリスクがあります。偽陽性を回避するため、事前準備として様々な方法が提唱されています。長時間絶食(18時間以上)や高蛋白食、高脂肪食、低炭水化物食の導入、ヘパリンの注射などが挙げられますが、いまだに方法が確立していないのが現状です。
当施設(北海道大学病院)では、18時間以上の絶食と低炭水化物食を導入することで、心筋への生理的集積は抑制することができています。
2009年1月から2018年12月までの期間で、当施設で心臓サルコイドーシスを評価する目的で施行されたFDG-PET/CT 487例を対象に、解析を行いました。
2009-2010年は半数の症例で生理的集積を認めましたが、2015年ごろから検査入院とするようにし、絶食時間の延長と低炭水化物食の導入を徹底するようにしました。2016年からはヘパリンはほとんど使用していませんでしたが、生理的集積を示す症例はごく少数でした。2018年は他院依頼でPETを撮像する症例(外来)を除き、入院して撮像した全症例で生理的集積を抑制できました。
生理的集積の有無を、絶食時間、低炭水化物食の有無、ヘパリンの有無に基づいて多変量解析を行ったところ、低炭水化物食と絶食時間はp<0.05と有意差を示す結果になりました。へパリンはp=0.34と有意差を認めませんでした。今回の研究結果からは、心臓サルコイドーシスを評価するためのFDGPETで必要となるのは低炭水化物食と絶食時間の延長であり、ヘパリンは必要でない可能性を示唆する結果になりました。
発表後、興味を持っていただいた先生などから貴重なご意見を頂き、大変有意義な経験ができました。本学会で得られた知見を今後の研究活動に役立て、少しでも核医学領域の研究発展に貢献できればと思います。
最後になりましたが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。