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第22回日本心不全学会学術集会
札幌医科大学付属病院 看護部
津村 早紀氏
2018年10月11日から13日までの3日間にわたり、東京の京王プラザホテルで「心不全医療のイノベーション」をテーマとして開催された第22回日本心不全学会学術集会へ参加してきました。
私は本学会において、「心アミロイドーシスと診断された患者の心理過程−5人の患者のインタビューから−」という演題で発表しました。心アミロイドーシスは、アミロイド繊維の沈着により拡張不全や致死性不整脈をきたす予後不良な疾患です。この疾患の突然の発覚によって、患者は危機的状態に陥る一方で、残された短い期間で人生を振り返り、今後の生き方、療養について意思決定をしていかなければなりません。心アミロイドーシスと診断された患者が抱く感情や、療養中に辿る心理過程を明らかにすることは、看護者が患者の療養を支える上で重要であると考え、研究に取り組みました。5名の患者に対しインタビューガイドを用いた半構成面接法を実施し、インタビュー内容を逐語録におこし分析した結果、「衝撃による混乱」「現実と向き合う苦悩」「受け入れようと言い聞かせる」「否認」「病気を直視せず目を背ける」の5つのカテゴリーが抽出されました。
患者は疾患発症時、得体の知れない病名を聞かされ現状が理解できず、「衝撃による混乱」状態でした。心アミロイドーシス患者では、疾患発症時に危機的状態に陥るのが心理過程の特徴の一つでした。危機的状態を乗り越えた患者は家族の支えを感じていました。家族の支えを得られていなかった患者は疾患を受容することができておらず、より看護支援が必要となります。そのため、患者の家族背景や支えが得られる環境であるかを確認し、看護者が精神的支援を行っていく必要があります。
また、患者は、治療は進んでも病気を受け入れることができず、病気療養という「現実と向き合う苦悩」を感じていました。苦悩しながらも今自分が生きているということそのものを見ていこうと考え、生かされている現状を受け入れるよう考えていました。
一方、病気と向き合い人生の再出発と考えている患者でも、完全に病気を受け入れているとは言えない状態でした。受け入れているように見えても患者の心理は常に揺れ動いており、看護者は患者がどのように病気という現実と向き合おうとしているのかを感じとり、患者の心理に共感し、ありのままを受容する姿勢でいることが必要と考えます。
心不全患者は全人的苦痛を抱えており、終末期に至る前から患者・家族のQOL向上のために多職種チームによる支援を行う必要性があります。心不全は急性増悪や寛解を繰り返し、最期は急速に状態悪化するため、予後予測が困難です。そのため早期から患者・家族と望む生き方・治療について医療者と共有し話し合っていくACP(アドバンスケアプランニング)が重要となります。現在、全国で循環器領域におけるACPの取り組みが積極的に開始されており、当院でも心不全多職種チームを発足し、ACPをシステム化していけるよう取り組みを開始しました。今回の学会での学びを今後の活動に活かして行きたいと思います。
最後になりますが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。