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第23回日本心臓リハビリテーション学会・学術集会
手稲渓仁会病院 心臓血管センター 循環器内科
石井 奈津子氏
2018年10月11日〜13日に東京都新宿区にて開催されました、第22回日本心不全学術集会に参加させていただきました。医師だけでなく、多くのコメディカルの方々も参加されており、心不全の新しい治療薬はもちろんのこと、チーム医療や緩和ケアに対して関心を持った方々が多い印象でした。
私は、「急性心不全を伴う頻脈性上室性不整脈に対する、ジルチアゼムとランジオロールの比較検討」と題して、当院で両者の薬剤の適切な使用方法を模索することを目的に行った後ろ向き調査の結果を発表しました。
上室性不整脈を認める心不全合併患者に対してrate controlを目的にカルシウムチャネルブロッカー(CCB)を使用することは推奨されていません。しかし、本調査ではβブロッカーであるランジオロールよりも優れたrate control効果を得られる可能性が示唆されました。使用方法と対象患者の選択によっては、非ジヒドロピリジン系のCCBであっても安全に使用できる可能性があり報告させて頂きました。
少人数を対象とした後ろ向き調査のため限界はありますが、急性心不全を伴う頻脈性上室性不整脈例を診療する際の治療薬選択の一助になればと考えております。
また、「超音波内視鏡下穿刺吸引術で診断された、心臓サルコイドーシスの症例」という演題で、症例報告もさせていただきました。2016年版の心臓サルコイドーシスガイドラインにもありますように、心臓限局性サルコイドーシスの早期発見と早期治療の必要性が指摘されているものの、心筋生検の感度の低さや、確定診断にいたるには施設の制限などで困難な場合があることが問題になります。
しかし、縦隔限局性にリンパ節の腫脹が認められる場合には、超音波内視鏡下穿刺吸引術が低侵襲かつ安全な方法です。当院は消化器内科や呼吸器内科との連携が可能な病院であったため、各科と協力し速やかに診断に至ることができました。今後、この診断法が心臓サルコイドーシスの診断の一助となる可能性があることを周知したいと思い報告させて頂きました。
多くの症例報告や臨床研究、またチーム医療に関して各施設で取り組まれていることについて触れられる貴重な機会を与えて下さったことを心より感謝しています。重ねて御礼申し上げるとともに、今後の日常臨床にこの経験を活かしてゆきたいと思っています。
今後は本研究を発展させ、心不全患者の高尿酸血症への治療介入により運動耐容能が改善するかどうか、高尿酸血症が運動耐容能を低下させるメカニズムを明らかにし、心不全の予後や運動耐容能の改善を目的とした新たなエビデンスの構築を目指し研究を進めて参ります。
最後になりましたが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。