NO.96 |
Cell Symposia Multifaceted Mitochondria
北海道大学大学院医学研究科 循環病態内科学
大学院生 白川 亮介氏
アメリカのサンディエゴで2018年6月4日から6月6日までの3日間開催された、「Cell Symposia Multifaceted Mitochondria」に参加いたしました。サンディエゴを代表するテーマパークであるシーワールドの近く、バケーション島のParadise Point Resort & Spaというリゾートホテルが会場であり、ラフな服装の参加者が多い学会でした。
私は今回、「心不全における末梢血ミトコンドリア由来活性酸素種の役割:心不全重症度および運動耐容能低下との関連」という演題でポスター発表させて頂きました。
心筋におけるミトコンドリア機能異常および酸化ストレスは心不全の発症・進展において重要な役割を果たしています。しかしながら、全身を循環し、大量に存在する末梢血単核球細胞(PBMC; peripheral blood mononuclear cell)のミトコンドリア機能異常およびミトコンドリア由来の活性酸素種(ROS; reactive oxygen species)と心不全における心機能、運動耐容能の関連については明らかにされておりません。その点に着目し、心不全の重症度や運動耐容能低下とPBMCミトコンドリアROS産生量との関連について検証いたしました。慢性心不全患者を軽症群と重症群に分けて登録し、高感度ミトコンドリア機能測定機器を用いて、PBMCミトコンドリアの呼吸能およびミトコンドリア由来のROS産生能を測定いたしました。重症群ではPBMCミトコンドリアの電子伝達系最大呼吸能が低下しており、更にはROS産生能が亢進していることを明らかにしました。
また、心肺運動負荷試験にて運動耐容能を評価し、運動耐容能の指標である最大酸素摂取量はPBMCミトコンドリアROS産生能と強い負の相関を示し、PBMCミトコンドリア呼吸能とも正の相関を示しておりました。一方で、PBMCミトコンドリアROS産生能および呼吸能は心エコーにより評価した心機能との相関関係はありませんでした。
この結果から心不全の増悪および心不全患者の運動耐容能低下にはPBMCミトコンドリアのROS産生能亢進および呼吸能低下が関与している可能性が示されました。これらに対する介入方法を検討し、治療法開発に繋げていきたいと考えております。
今回はポスター発表という形でしたが、言語の壁により考えていることを十分に伝えることができない悔しさはありましたが、それも含めて大変貴重な経験となりました。
本学会の経験を今後の研究活動の糧とし、心不全研究の発展ならびに新たな心不全治療の開発に少しでも貢献できるよう、努力して参ります。
最後になりますが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。