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第63回日本透析医学会学術集会・総会
札幌南一条病院 透析室
看護師 高野 博友樹氏
2017年度欧州心臓病学会が、8月26日から5日間2018年6月29日から7月1日の3日間、兵庫県神戸市にある神戸国際会議場・ワールド記念ホール他複数の場所で行われた「第63回日本透析医学会 学術集会・総会」に参加してきました。
今回は、腎代替療法を中心に「患者のためになる医療は何か」について考え、日本全体の腎代替療法の水準を向上・維持することを目標に、腎機能と患者活力の甦りを図るということで「腎甦絶技」という言葉をテーマに開かれた学会でした。私は本学会において、「透析患者の貧血管理におけるガイドラインに準拠した4分割図のシステム化とその活用の有用性」という演題名で発表する機会をいただきました。
慢性腎臓病患者における腎性貧血の適正管理は、死亡リスクの低減、QOLの向上において重要とされています。腎性貧血の成因はエリスロポエチン産生低下が主体とされていますが、加えて、鉄不足、赤血球寿命の短縮、溶血などが関与するとされており、特に、鉄の適正管理は高価な造血刺激薬(ESA)の節減につながり医療経済上も重要となります。
当院透析室では、当院システム開発室の協力を得て、検査データ管理をシステム化し、この際に、JSDT(日本透析医学会)の慢性腎臓病患者の腎性貧血治療ガイドライン2015年版に準拠し、血中フェリチン値・TSAT値による鉄管理の4分割図の自動表示化と患者のグループ化(G1〜G4)を行いました。
これは、各群ごとに散布図で患者名が表示され視覚的にも患者の鉄代謝管理状況を容易に把握しやすくしたものです。これを透析室スタッフが利用して患者の鉄不足・鉄過剰の早期把握、主治医との迅速な情報交換や患者指導、治療方針の決定に活用してきました。
ガイドラインによると鉄補充療法の開始基準はTSAT20%未満、血清フェリチン100ng/mL未満が推奨されています。本システムにより、G1群:TSAT20%未満・フェリチン100ng/mL未満、G2群:TSAT20%以上・フェリチン100ng/mL未満、G3群:TSAT20%未満・フェリチン100ng/mL以上、G4群:TSAT20%以上・フェリチン100ng/mL以上に分類しました。
本研究では、4分割図導入後の貧血・鉄代謝管理の有用性を当院入院外来維持透析患者を対象に調査、検討し、結果として、4分割図の自動表示化導入により、鉄代謝、特に鉄不足例の迅速な表示・把握が可能となり、鉄管理の適正化によるHb10g/dL未満、かつ、鉄不足群の有意な減少、目標Hb値・フェリチン値・TSAT値の達成率の向上とESA使用コストの削減に繋がったことがわかりました。
4分割図はフェリチン・TSATの低い鉄不足例のみならず、持続的な鉄過剰例の把握・管理にも有用と考えられます。
今回の学会参加では、全国から多くの医療従事者による様々な研究発表・討論がなされ、多くの刺激を受ました。自分の発表の場でも、複数の先生方から本研究へのご指摘やご助言をいただくことができ、今後の研究の進展・診療の質の向上へのモチベーションを高めることができました。本研究をさらに進め、その成果を継続して発表できるよう、日々精進していきたいと思っています。
最後になりますが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。