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第18回国際薬理学・臨床薬理学会議
北海道医療大学薬学部 薬理学講座
助手 遠藤 朋子氏
2018年7月1日から6日までの6日間にわたり京都府の国立京都国際会館を会場として開催された第18回国際薬理学・臨床薬理学会議へ参加してきました。
本学会は、4年に1度行われる国際薬理学会と毎年行われる日本薬理学会年会が合同で開催された盛大なもので、薬理学及び臨床薬理学分野に携わる世界83カ国から研究者4500人以上が集まり、基礎から臨床研究に至るまでの最新の研究成果が発表、討論されました。
また、国際的にも著名な研究者による講演もあり、最新の研究や技術に大変刺激を受けました。
私は今回、『19,20-エポキシドコサペンタエン酸はミトコンドリアのセラミド蓄積を介してラット心筋芽H9c2細胞の機能を抑制する』をテーマに、ポスター発表をさせていただきました。
本研究は、筆者が2017年9月まで留学していたカナダのアルバータ大学薬学部のDr.Seubert研究室と北海道医療大学薬学部との共同研究です。
魚に多く含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)の代謝物の1つである19,20-エポキシドコサペンタエン酸(19,20-EDP)が、ラット心臓由来細胞であるH9c2細胞に対してどのような影響を示すかについて調べた研究です。
DHA及び19,20-EDPは、循環器疾患において保護的な役割を示す一方で、近年がん細胞に対して抑制作用を示すことも報告されており、様々な作用を示すことで注目を集めています。
本研究で、H9c2細胞はグルコース濃度を変えて培養することで代謝経路が変化し、DHAおよび19,20-EDPが代謝経路依存的に異なる作用を示し、その機序にミトコンドリアへのセラミド蓄積が重要な役割を果たしていることを明らかにしました。
ミトコンドリアは細胞が生きていく上で重要なエネルギーであるATPの産生を担い、その機能不全は細胞機能全体に影響を及ぼします。
本研究によりDHA及び19,20-EDPは、病的な代謝経路に陥った細胞に選択的に作用し、細胞死に導くことを見出しました。
19,20-EDPをはじめとする代謝物の研究は、未解明な部分が多く、本研究はその作用機序を解明する上で一助となると考えられます。
多くの研究者より興味深い質問、意見をいただき、活発な討論に参加できたことで、今後の自分の研究を発展させるにあたり、大変貴重な見聞が得られました。
国際学会ということで、すべての発表は英語で行われました。世界で活躍するためには英語は非常に重要であるということを改めて痛感し、日頃からさらに英語に触れる機会が必要だと感じました。
最後になりましたが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。