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第26回日本心血管インターベンション治療学会学術集会
旭川医科大学病院 臨床工学技術部門
臨床工学技士 延藤 優太氏
2017年7月6日から7月8日の3日間、京都府京都市左京区宝ヶ池にあります国立京都国際会館で行われた第26回心血管インターベンション治療学会学術集会に参加してきました。
本学会は、医師・看護師・放射線技師・臨床工学技士等の様々な職種が発表し、活発な討論・意見交換が行われています。
この度私は「XEMEXOptoWireとSJMCertusの比較」という演題で発表させていただきました。
今回、比較することになった、プレッシャーワイヤーとは圧センサー付きガイドワイヤーで冠血流予備量比を計測するものです。現在では、FFR値0.75未満が虚血の閾値として報告されており、ESCガイドラインでもClass1Aと推奨され、虚血評価として重要な役割を担っている検査です。
FFR値とは、簡単に言うと冠動脈狭窄前後(大動脈圧と狭窄を抜けた後の圧)の圧格差を計測しています。実際の検査では、Pa(大動脈圧)とPb(プレッシャーワイヤーの先端圧で、狭窄を抜けた後の圧を反映)で表され、Pb/Pa=FFR値となっています。狭窄がない血管は圧格差がないのでFFR値1.0となります。プレッシャーワイヤーの測定原理は電気センサーと光センサーの2種類が存在します。光センサーを採用しているOptoWireは圧ドリフトの影響を受けにくいと提唱されています。
そこで、今回の研究では、測定原理の異なる電気センサーのCertusと光センサーのOptoWireの圧ドリフトについて比較しました。実験の方法としてWetLaboという狭窄を作成できる模擬血管を使用し、FFR値は有意狭窄である0.75に設定し拍動ポンプで圧をかけ、両プレッシャーワイヤーでFFR値を測定しました。10分毎にFFR値を測定し圧ドリフトの有無を評価しました。
結果ですが、OptoWireは開始10分以内でFFR値0.72と低下し圧ドリフトを認めました。それ以後ほぼ一定に経過し、狭窄解除後は0.99とほぼベースラインに復しました。一方、Certusでは開始後60分まで0.75〜0.77と経時的な上昇傾向が見られ、狭窄解除後1.03とドリフトが認められました。今回、経過10分以内に圧ドリフトが認められたOptoWireは時間経過によっては、機能的狭窄度の過大評価につながる可能性が考えられました。
今回の実験では、ドリフトが起こるとされている影響を可及的に排除したモデルで行っているため、一番考えられる原因として温度による影響の可能性が考えられました。両ワイヤー共に圧ドリフトが認められましたが、相反する特性を有していることを考慮し、使用することが重要だと考えられました。
今後は灌流水の温度を変えるなど、様々な方法で実験を行い、更なる原因を追究したいと思います。
最後に、本学会の参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より御礼申し上げます。