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第64回日本心臓病学会学術集会
手稲渓仁会病院 循環器内科
医員 太田 真之氏
2016年9月に、日本心臓病学会が東京で開催されました。日本心臓病学会は年に1回開催される全国学会で、多くの医師、メディカルスタッフが参加し、先進的な研究成果を報告しています。
今回、私は同学会で重症大動脈弁狭窄症の新しい治療法である経カテーテル大動脈弁植え込み術(Transcatheter Aortic Valve Implantation)、通称TAVI(タビ)に関する研究発表を行う機会をいただきました。
大動脈弁狭窄症は高齢化による動脈硬化が原因の一つと言われており、今後も増加するとされている心臓弁膜症の一つです。
大動脈弁とは、全身に血液を送り出す左心室の出口にある弁で、大動脈弁狭窄症とは、この大動脈弁がうまく開かなくなった状態を指します。
正常の大動脈弁は3〜4cm2の大きさ(10円玉程度)まで開き、1分間に約5Lの血液を全身に送り出していますが、これが1cm2未満(鉛筆の芯程度)ほどしか開かなくなると、重症の大動脈弁狭窄症と言われ、血液を十分に全身に送り出せなくなり、胸痛や失神、心不全、突然死を引き起こします。
重症の大動脈弁狭窄症になると、治すためには弁置換術が必要となりますが、リスクが高いために通常の外科的大動脈弁置換術の適応とならないことがあります。
このような場合に、より低侵襲な治療法として新たに考えられたものがTAVIです。TAVIが導入されたことにより、今まで治療できなかったハイリスクな症例も、治療することができるようになりました。
TAVIでも治療困難な症例や、従来の外科的大動脈弁置換術のほうが適する症例もありますが、当院では内科・外科など各科の医師やメディカルスタッフが、一人一人の患者さんにとって最適の治療法は何かを協議し、チーム一丸となって治療にあたっています。
今回、当院におけるTAVIの治療1年後の症状や検査データなどの推移について報告させていただきましたが、実際に患者さんの症状や心不全兆候を示す採血データ、心エコーの指標などが改善していることが明らかになりました。今後も大動脈弁狭窄症で困っている一人でも多くの患者さんに対して、TAVIを含めた適切な医療を提供させていただきたいと思います。
最後になりましたが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。