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第37回日本臨床薬理学会学術総会
手稲渓仁会病院 薬剤部
薬剤師 清水 麻衣氏
平成28年12月1日から12月3日にかけて鳥取県米子市米子コンベンションセンター・米子市文化ホールで行われた第37回日本臨床薬理学会学術総会に参加しました。
本学会は医師、薬剤師、看護師の他、製薬会社や研究所などで創薬に関わる職種の方々による発表も行われ、基礎研究から臨床に至るまで幅広い分野で職業・職種の垣根を越えて活発な意見交換が行われました。
その中で私は、「当院における脂質異常症治療患者の検査値と治療薬の変化」という演題で発表させていただきました。
脂質異常症は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が高い、またはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い状態を言い、動脈硬化の原因となり、将来、脳や心臓の疾患に罹るリスクを上昇させます。
脂質異常症にはいくつかの系統の治療薬があります。LDLコレステロールの産生を抑制するスタチン系薬剤、主に中性脂肪の産生を抑制するフィブラート系薬剤などです。
本研究では、過去15年間に当院でコレステロール、中性脂肪の数値を測定した患者さんの検査結果と、当院で処方された脂質異常症の治療薬の種類、処方量を振り返り、どのような傾向がみられるかを調査しました。
その結果、LDLコレステロール値の平均は年々低下していることがわかりました。特に脂質異常症の治療薬を内服している患者さんの検査値の平均は有意差をもって低下していました。
当院における脂質異常症の治療薬はスタチン系の中でも効果の強い薬剤(ストロングスタチン)の処方量が年々増加し、現在では脂質異常症に対する治療薬の78.8%をストロングスタチンが占めていました。
今回の結果から、脂質異常症治療には薬物療法が有効であること、ストロングスタチンが現在の治療の中心となっていることが分かりました。
また、過去15年のLDLコレステロールの検査値の平均を1月と7月で比較したところ、7月の方が低い傾向にありました。このことから脂質の値は季節によっても変化する可能性が示唆されました。
脂質異常症の治療は、運動、食事など生活習慣の改善が重要と言われていますが、正しく薬を飲むことも、将来、脳卒中や心筋梗塞に罹らないために重要です。
私たち薬剤師は患者さんが無理なく安全で効果的な薬物療法を続けるための工夫をこれからも考えていきたいと思います。
最後に、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より御礼申し上げます。