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第81回日本循環器学会学術集会
手稲渓仁会病院 リハビリテーション部
理学療法士 阿部 真佐美氏
去る平成29年3月17日〜19日の三日間、第81回日本循環器学会学術集会が石川県、金沢市で開催されました。
本学会は、昭和11年に第1回総会が開催され80年に渡る長い歴史があります。また、会員数2万人を超えた非常に大きな学会であり、会場では、日本のみならず各国から医療人が集まり英語のセッションも数多く開催されていました。
今回会場となった金沢市は、2015年に北陸新幹線が開通し、近代的な賑わいを見せる一方で、昔から存在している街並みが大切に保存された非常に魅力的な町でした。
私はこのような由緒ある学会で、“心疾患患者に対する二重課題が身体機能及び心理面に及ぼす影響”というテーマでポスター発表をさせて頂く機会を預かりました。心大血管リハビリテーションでは、入院中の身体機能向上を目指した運動処方のみならず、退院後の再発予防や生活の質(QOL;quality of life)向上を視野に入れた自己管理指導が必要となります。近年、高齢化したリハビリテーション対象者に対し、入院中の認知機能を維持させることは、退院後のQOLに大きな影響を与えます。
また、自宅において運動療法を継続するためには、対象者の心理面、特にやる気の維持が必要不可欠と考えられます。本研究では、心疾患患者に対する集団リハビリテーションにおいて、認知機能低下を予防する二重課題が、運動機能及び心理面にどのような影響を及ぼすかを調査いたしました。
結果として、心疾患患者に対する二重課題を用いたエクササイズは、身体機能の改善に加え、日常生活動作(ADL;activities of daily living)及びやる気を向上させることが明らかとなりました。ADLを獲得しておくと退院後の自宅での介助量軽減に役立ち、やる気の向上は退院後の生活において、運動習慣の継続に作用することが期待されます。
しかしながら、本研究の限界として、二重課題だけでなく、心臓リハビリ特有の集団介入が心理面のやる気向上に影響を及ぼした可能性も考えられ、二重課題のみが心理面に作用したどうかについては、今後さらなる調査が必要となります。
今回、一理学療法士として学会発表に向け準備を進める中で、日々臨床に向き合いながら感じた疑問を一つ一つ明らかにすること、疑問を持ち続けること、そして科学的根拠をもとに治療を行う大切さを再認識いたしました。
本学会では、医者のみならず理学療法士や看護師をはじめとするコメディカルも全国から集まり、熱心に日々の研究報告をしていました。普段交流できない各地方リハビリ状況や最新の知見を学ぶことができ、私にとって大変刺激的な三日間となりました。
末筆になりますが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より御礼申し上げます。