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第25回日本心血管インターベンション治療学会学術集会
北海道医療センター臨床工学技士
小嶋 睦明氏
平成28年7月6日から9日の4日間、東京国際フォーラムで第25回日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)が開催されました。
この学会は心血管疾患患者に対する有効かつ安全なカテーテル治療の開発と発展、及び臨床研究の推進とその成果の普及をもって、診断治療技術の向上と学術文化の発展に資することにより、心血管疾患の予後改善の責務を広く社会に果たすことを目的としており、全国から心臓や下肢の血管内治療(経皮的冠動脈形成術 PCI:percutaneous coronary intervention / 末梢血管治療 EVT:endovascular treatment)に従事する医師や研究者、その他の医療従事者(コメディカル)など約5,700名が参加しました。
また、この学会は総合評価から次のステップを考慮する力を持ったプロ集団でありたいことを願って“The road to Professional”をテーマとしており、大変多くの講演やセミナーが企画され、コメディカルを対象としたセッションも充実しており基礎的な教育から最新の治療や研究、新しいデバイスや医療機器の展示など充実したプログラムでした。
私は「高度石灰化を伴った総大腿動脈病変の治療におけるCROSSERとスコアリングバルーン併用の有用性」についてポスターセッションで発表しました。近年、末梢動脈疾患(PAD)は高齢化社会や糖尿病の罹患率増加などの影響からその患者数は年々増加し、またそれに伴って薬物療法、外科的手術、さらに下肢のEVTも増加傾向にあります。
EVTは局所麻酔によるカテーテル治療であることから体への負担が小さいというメリットがあるため、いろいろな合併症を有したり外科的手術が困難とされる患者の治療も可能とされています。
しかし、下肢の慢性完全閉塞病変(CTO:Chronic Total Occlusion)や高度石灰化病変のように、EVT施行に難渋する症例もあり、また、その治療においては使用するデバイスの重要性がとても高く、特性を理解した上で適切なデバイスを選択することが大切になってきます。
下肢動脈の石灰化を毎秒2万回の振動で除去し、カテーテルを通すための国内に導入されてまだ新しいデバイスである振動式末梢血管貫通用カテーテルシステム(CROSSER)と、バルーンの外側に沿ってナイチノール製のスコアリングエレメントが配置された血管内膜に亀裂を入れて拡張することができるスコアリングバルーンを併用することで、総大腿動脈や膝窩動脈の病変のように解剖学的な特徴や治療計画などからステント留置の適さない領域であるnon stenting zoneに対しステントを留置することなくEVTを行えるようになりました。
発表では当院におけるこれらデバイスを併用した症例報告とその治療成績について報告させていただき、発表後には他施設での現状や治療に関する意見交換をすることもできたので、今後の臨床業務において大変参考になりました。
最後になりましたが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。