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第22回国際心臓研究会学術集会
札幌医科大学
循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座
大学院生 舘越 勇輝氏
2016年4月18日から21日の4日間、アルゼンチン・ブエノスアイレスにて第22回国際心臓研究会学術集会が開催されました。
3年に1度開催されるこの国際学会では、日夜心血管病の研究に携わる世界中の医師・研究者達が一堂に会し、その成果を発表します。今回私は同学会に参加させて頂く機会得る事が出来、現在我々が取り組んでいる研究テーマに関する発表をして参りました。
今回私は、「糖尿病性心筋症の発症機序に関する研究:糖尿病心筋におけるAMPデアミナーゼ活性増加の要因」というテーマで発表させて頂きました。
近年は食生活の欧米化に伴い、肥満及び糖尿病患者は増加の一途を辿っております。併せてその合併症の増加は特に深刻な問題です。
我々が報告した糖尿病性心筋症とは糖尿病患者において認められる心臓の収縮拡張障害を指し、その予後は心筋梗塞の既往と同等に不良である事が報告されています。
その発症機序の解明に関しては、全世界で多くの研究者達が取り組んでいるテーマではあるものの、未だ一定の見解は得られておらず、また有効な治療法は発見されておりません。
我々は肥満・2型糖尿病モデルラットを用いた実験によりAMPデアミナーゼの活性増加が心臓の機能を低下させている事、またその原因がフルクトース1,6リン酸の低下である事を報告しました。AMPデアミナーゼは細胞内のエネルギー代謝を整える作用を持つ酵素であり、一方でフルクトース1,6リン酸は細胞内に取り込まれた糖が代謝される事により生成される代謝物であります。
いずれも糖尿病患者で障害される糖代謝やエネルギー代謝に深く関わる物質であり、多くの方からご質問・ご意見を頂き活発な議論を行う事が出来ました。
今後は更にその発症機序の解明について研究を重ね、最終的には糖尿病性心筋症で苦しむ患者さん達に役立つ治療の開発に目指していきたいと思っております。
今回の学会参加により各国で常にアップデートされて続けている心血管研究の最前線を学ぶ事が出来、臨床においても研究においても大きなモチベーションを頂く事が出来ました。この経験を、微力ながら北海道の医療に還元して参りたいと思います。
最後になりましたが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました一般財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。