NO.72 |
第21回 日本心臓リハビリテーション学会 学術集会
北海道大学大学院医学研究科
循環病態内科学 博士研究員
高田 真吾氏
平成27年7月18日から2日間、福岡県の福岡国際会議場にて、第21回日本心臓リハビリテーション学会学術集会が開催されました。本学会では「心臓リハビリテーション」に関して基礎・臨床の立場で最新の知見から今後の展望に至るまで広く発表・討論が行われました。
今回は幸いにも参加する機会を与えて頂き、様々な知見や経験が出来ましたので報告させていただきます。
さて、今回私は「DPP-4 inhibitor improved exercise capacity in mice with heart failure」という演題を「International Awards session」にて発表させていただきました。
心不全患者では運動能力が低下しており、運動能力低下は予後の規定因子として知られています。
また有酸素運動による運動療法は心不全患者の運動能力を改善し、予後を改善することが知られています。
しかしながら、心不全患者の運動能力を特異的に改善させる薬物療法は知られていません。心不全における運動能力低下について、骨格筋の形態・機能異常が重要な役割を果たしていることが明らかにされています。インクレチンホルモンは食事摂取に伴い消化管から分泌され、膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進するホルモンの総称ですが、その一種であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の受容体は心筋細胞、血管内皮細胞、骨格筋細胞に存在することが見出され、GLP-1はインスリン分泌作用だけでなく、心血管、骨格筋への直接的な作用を有すると考えられています。GLP-1はジペプチジルペプチダーゼ(DPP-4)によって数分のうちに分解されますが、DPP-4阻害薬は、濃度依存性にDPP-4を阻害し、活性型GLP-1濃度を増加させる薬剤です。これまで、GLP-1持続投与により、心不全患者での運動耐容能が改善することが報告されていますが、これまでに心不全でのDPP-4阻害薬投与による運動能力、骨格筋機能についての検討は行われていません。本研究ではDPP-4阻害薬投与は心筋梗塞後心不全モデルにおいて、骨格筋エネルギー代謝を改善し、運動能力を改善するかどうかを検討することを目的としました。本研究では心筋梗塞後心不全マウスに対するMK-0626の投与は、骨格筋線維タイプの改善と、運動能力の改善をもたらしました。これらの知見により、DPP-4阻害薬は心不全における骨格筋機能障害に対する新規治療薬になり得ることが考えられます。発表中は、幾人かの先生方から御助言等をいただき、これからの研究遂行にあたり大変貴重なものとなりました。この学会で得られた知見を今後の研究および予防・リハビリテーションにおける運動療法の発展に貢献できればと思っております。また、他の報告にも、今回発表させて頂いたテーマとは別の観点からのアプローチ、さらに詳細なメカニズムの一端に触れるものまで、今後の自分の研究を発展させるにあたり参考になる研究が多数あり、大変貴重な見聞が得られました。
最後になりますが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。