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第29回日本放射線技師学術大会 参加報告
JR札幌病院 放射線技師
秋林 毅幸氏
2013年9月20日から22日の3日間にわたり、島根県松江市において第29回日本放射線技師学術大会が開催されました。この学会は年に一度の診療放射線技師を対象に行われる学術大会です。今年も、臨床経験のみならず、医療安全対策や放射線機器管理、チーム医療の考え方や人員育成など数多くをテーマにした演題が全国から持ち寄せられ、活発な質疑応答が行われました。
今年のテーマは「国民・医療者と協働し、質の高い医療を提供しよう〜テクノロジーと匠の融合〜」でした。特別講演も含めると400以上の演題があり、私にとっては大変勉強になる学会となりました。
私は今回、CT部門の心臓CT時におけるランジオロール塩酸塩を使用した経験について発表してきました。心臓CTは心臓カテーテルによる冠動脈造影に比べて侵襲が低く、外来で比較的短時間で終了する簡便な検査であります。しかし冠動脈検査時に心拍数が高くなってしまい画質低下が生じて診断に影響を及ぼすケースが少なくないのが現状です。こういった経緯から検査中に心拍数を低下させる薬剤が認可されました。このランジオロールという薬品は2011年10月に保険適応となり、多くの機関で薬剤の使用を始めました。当院でも2012年4月からこの薬剤を使用し始めました。
この薬品は主に心臓に多く存在するβ1受容体を選択的に遮断することで、心拍を速やかに低下させる作用がある短時間作用型の薬品であります。製薬会社のデータによりますとこの薬剤の副作用は、血圧低下、ALT上昇・発疹、AST上昇・ビリルビン上昇・白血球増加など含め5%程度と報告されています。したがって、この薬剤の使用時は患者さんの容体の変化などに細心の注意を払う必要があります。当院で検査を行う体制としまして、放射線技師2名、看護師1名、放射線科スタッフ1名で検査を実施し、検査終了後と、終了後の10分後も患者さんの容体に変化が無いか確認しています。もし副作用などが発生した場合は迅速に適切な処置が行えるよう、すぐに放射線科医に連絡が可能な体制となっています。
今回、当院で行われた心臓CT116例に対してランジオロール塩酸塩を使用した結果、薬剤使用前の心拍に対して検査中の心拍は平均18%の低下を認めました。この薬剤効果が画質に与える影響は大変大きく、薬剤未使用では診断が不可能だったと思われる症例が、診断可能となりました。またこの116例におきましては、上記で触れた血圧低下、発疹、などの目視で確認可能な副作用につきましては0例という結果でした。このような事から、安全面を確立した状態でランジオロール塩酸塩を使用して検査を行うことは心臓CT検査にとっては有用であると言えます。今後も当院ではランジオロール塩酸塩を使用した検査を継続していく方向です。
これからも経験を活かして、安全かつ画質向上に努めて業務に携わっていきたいと思います。また機会がありましたら、学会等で演題を持って参加し、皆様のお役に少しでもたてれば、私としても嬉しく思います。最後になりますが本学会参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。