一般財団法人 北海道心臓協会

トップページ
すこやかハート
トピックス
講演
「○○○」といわれたら
循環器疾患の危険因子
心臓・血管病Q&A
セミナー参加報告
心血管病の治療最前線
心臓・血管病の危険因子
循環器疾患診断法・最近の進歩
ストレスと循環器
血管とその病気
運動と健康
心臓・血管病と闘う人たち
心臓・血管病予防の知識
医食同源
北海道心臓協会編集委員
入会のお願いとご案内
賛助会員の皆様
フリーイラスト集
「すこやかハート」100号記念
心臓協会20年間のあゆみ
事業計画・予算と事業報告・決算
リンク
お問合せ・健康相談はこちら
道新オーロラネットへ戻る
NO.62

第67回日本体力医学会 大会参加報告

北海道大学大学院 医学研究科
循環病態内科学講座 博士課程
 門口 智泰氏


門口 智泰氏

 第67回日本体力医学会大会は、9月14日から16日の3日間の日程で、岐阜県の長良川国際会議場および岐阜都ホテルで開催されました。本学会は毎年、国民体育大会の開催都市で開催されている歴史あるスポーツ医科学系の全国学会です。今年は、例年以上に基礎研究および臨床研究の発表が活発化しており、基礎研究においては、特に分子メカニズムに迫った興味深い研究が多かった印象を受けました。

 さて、私は本学会にて「クルクミンはタンパク分解を抑制して糖尿病誘発性骨格筋萎縮を軽減する」という内容について研究発表をさせていただきました。1型糖尿病マウスでは体重、骨格筋重量ともに著明な低下がみられますが、クルクミンを混ぜた餌を与えた1型糖尿病マウスでは、それらの低下が抑制されました。骨格筋萎縮を促進する代表的な因子として、骨格筋特異的ユビキチンリガーゼ(タンパク分解因子)であるMuscle Ring Finger-1、MuscleAtrophy F-boxの2つがありますが、それらの発現が骨格筋組織内にて著明に亢進しており、さらにそれらと関連するユビキチン結合タンパク発現も亢進していました。これらも同様に、クルクミンによって抑制されました。

 これらのことから、クルクミンが主に骨格筋ユビキチンリガーゼなどのユビキチン−プロテオソーム系の亢進を抑制することで、糖尿病に伴う骨格筋萎縮を抑制する可能性を示しました。

 骨格筋萎縮には、本研究で用いた糖尿病誘発性ものに加え、身体不活動、加齢性筋委縮(サルコペニア)および心不全に伴うカヘキシアなどがあります。骨格筋量減少に伴いQOL(生活の質)低下、さらには生存率低下が誘発されますが、特に心不全患者においてはそれが顕著であることがわかっています。骨格筋萎縮の作用機序は必ずしも一致しておりませんが、ユビキチン−プロテオソーム系を初めとしたタンパク分解因子の亢進が他の病態下においてもみられることから、クルクミンが動物モデルのみならず疾患者の骨格筋萎縮を低減し、QOLの向上、さらには生存率を改善させる可能性が示唆されます。

 質疑応答では、多くの先生方から興味深いご質問やご助言等をいただき、今後の研究遂行にあたり大変貴重なものとなりました。本学会で得られた知見を今後の研究活動に役立て、少しでも医学・健康科学分野の研究発展に貢献できればと思います。

 最後に、本学会参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。


  
(一財)北海道心臓協会 〒060−0004 札幌市中央区北4条西4丁目 (株)伊藤組内 TEL 011-241-9766
(C)Hokkaido Heart Association. supported by Doshin Access Co., Ltd.