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アメリカ心臓協会学術集会参加報告
北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学
大学院生 野澤 篤史
2010年11月13日から17日までの5日間の日程でアメリカ心臓協会年次学術集会がアメリカ合衆国イリノイ州シカゴで開催されました。本学会は100カ国・地域から3万人近くが参加する世界最大の循環器学会で、4000以上の演題が発表される循環器内科医としては一度は参加してみたいと思えるような学会です。プログラムは、「Cardiovascular Imaging」や「Vascular Disease: Biology and Clinical Science」という「Cores」と呼ばれる7種類のテーマで構成され、テーマごとに会場が分かれており、広大な学会場での移動距離が短くてすむような工夫がされ、数多くのセミナーやプレナリーセッション、大規模臨床試験の報告や記念講演など様々なプログラムが用意されていました。
私は今回、NKT細胞と動脈硬化粥腫破綻に関する研究について、ポスター発表をさせて頂きました。ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞とT細胞双方の表面抗原を発現し、自然免疫と獲得免疫を調節するT細胞亜群ですが、本研究ではアポE欠損マウスを高脂肪食で飼育した動脈硬化粥腫破綻マウスモデルにおいて、NKT細胞を活性化することにより,血管組織へのNKT細胞、T細胞の集簇およびマクロファージの活性化、TH1サイトカインであるIFN-γや細胞外マトリックス分解酵素MMP-2の亢進が認められ、さらに腕頭動脈における動脈硬化粥腫の脆弱性が増加しました。このことからNKT細胞は動脈硬化病巣の発症・進展のみならず、動脈硬化粥腫の破綻にも寄与していることが確認され、免疫調節細胞であるNKT細胞が動脈硬化性疾患の新たな予防・治療の標的として有望である可能性が示唆されました。
発表の際には普段研究室では気付かなかったような質問や助言を他の研究室の方から受け、現在の研究で足りない点や今後の進めるべき方向性について考えることができました。また、研究内容について英語で質問を受け、英語で答える初めての経験でしたが、自分の心もとない英語力のために適切な返答ができないこともあり相手の先生に申し訳なく感じたこともありましたが、なんとか相手の英語を聞き取り、それに対して説明し、ある程度でも理解してもらえた時は嬉しくもあり貴重な経験だと感じられました。
学術集会の開催されたシカゴ市はミシガン湖の南西岸に位置する全米第三位の都市で、摩天楼の発祥とも言われており、街中には名建築が立ち並び、ホテルの周辺を散歩しているだけで十分に観光をしている気持ちになりました。また、ミシガン湖からの風が強く吹き付ける"windy city"という愛称でも呼ばれております。相当寒いと覚悟していましたが、天気にも恵まれたおかげか体感温度としては札幌と同程度な印象でした。名物のディープ・ディッシュ・ピザや巨大なステーキを食べる機会など恵まれ、いろいろな面でアメリカ的なスケールの大きさを感じ帰国してきました。
これらの貴重な経験・知見を今後の研究や診療に役立て、少しでも医学および医療の発展に貢献できればと思います。
最後になりましたが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に厚く御礼申し上げます。