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第14回日本心臓リハビリテーション学会参加報告
札幌医科大学大学院 保健医療学研究科 理学療法士
片野 唆敏さん
心臓リハビリテーションとは、心疾患患者の一日でも早い社会復帰、健康に関連する生活の質の向上、さらには再発の防止を目的とする、運動療法を中心とした食事療法および心理カウンセリングなどの介入の総体を示します。そして、患者の年齢が高齢化する現代社会においては、今後その重要性がますます高まる医療分野になると予想されております。
日本心臓リハビリテーション学会は、そのような心臓リハビリテーション全体に関する学術活動の発展に加え、心臓リハビリテーション医療そのものを広く普及させること、広く関連職種への啓発を図ることを目的に活動しております。したがって、本学会は、医師のみなず、看護師、理学療法士、臨床検査技師などのコメディカルスタッフや体育関係者など、多くの職種が参加し、意見交換や知識の交流を行う重要な場となっております。
今年の学会は、2008年7月18日から3日間、連日30℃を超える真夏の大阪において開催されました。「心臓リハビリテーションの新しい潮流ー治療、予防、撲滅ー」がメインテーマのもと、心臓リハビリの先進的手法、糖尿病の血管病変とリハビリテーション、自律神経系とリハビリテーションなど、最前線の研究に関する議論が展開されました。一般演題数は200題を超え、年をかさねるほどに増加傾向にあり、本学会の発展を思わせるほどです。
近年の心臓リハビリテーションには、二つのパラダイムシフトが見受けられます。一つ目は、心臓リハビリテーションの治療戦略が、心疾患罹患後の社会復帰とした過去のものから、罹患後の二次予防、そして現在では疾患そのものを起こさない一次予防の観点へとシフトしたことです。そして二つ目は、心臓リハビリテーションの治療が、心臓の構造的・機能的側面をターゲットとしていた過去のものから、患者の精神的あるいは社会的側面をも含んだ、より包括的な取り組みとなったことです。これらの二つの変革により、現在の心臓リハビリテーションには包括的な治療が要求され、より多くの職種の関わりが必要不可欠となっております。
運動療法は心臓リハビリテーションの中核を担う医療行為であると強く認識されるようになりましたが、本学会においても心臓リハビリテーションにおける運動療法の重要性が報告されておりました。イタリアのLaRevore先生は、突然死の予防には自律神経活性、特に副交感神経活性が重要であるとした自身の研究成果を報告した後、運動が心臓副交感神経活性に与える効果について最新の知見を報告されました。また、大阪府立成人病センターの堀正二先生は講演のなかで、「運動による健康への効果は薬によるそれを凌駕すると考えております」と強調しておりました。いずれの講演も、最新の知見がまとめられており、非常に実用的かつ臨床的な内容でした。
医師が病気の治療に「薬」を処方するのと同様、我々理学療法士は病気に対して「運動」を武器に治療を行います。私は日々、運動を処方し、運動療法のもつ可能性について追求しておりますが、本学会に参加し、最新の知見や多くの意見に触れることができ、大変刺激的な経験をすることができました。本学会を通して学んだことを、実際の臨床現場で生かし、また自分自身も、運動のもつ可能性についてさらなる追求をしていきたいと考えております。
最後に、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に対し、厚く御礼申し上げます。