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第22回国際高血圧学会に参加して
札幌医科大学 内科学第 2講座 大学院生
古堅 真さん
2008年6月14日から19日の6日間、第22回国際高血圧学会と第18回ヨーロッパ高血圧学会の合同学術集会がドイツ・ベルリンのInternationales Congress Centrum Berlin(ICC)にて開催されました世界中から集まった参加者は8500人を超え、発表演題は2527題と過去にない盛り上がりをみせていました。
初日は、大会会長を務められたDetlev Ganten氏主宰による、「レニン−アンギオテンシン−アルドステロン系(RAAS)の過去、現在、未来」をテーマしたシンポジウムが開催されておりました。シンポジウムは5つのセッションで構成されており、高血圧の病態生理の実像について議論されていました。また、Ganten氏は今大会を通じて、「高血圧は、今後開拓すべき薬物療法の中で最も優先順位の高い疾患である」とのメッセージを発信しており、高血圧に関する最前線の研究はもとより、メタボリックシンドローム、心血管疾患、慢性腎臓病などに関する演題も多数発表されていました。さらに、本大会では、高齢者や女性、子供といった特定の対象に焦点を当てたセッションも設置されており、特定の集団における高血圧疾患の特徴を把握し、それぞれに適切な治療法について議論されていました。
今回、私たちは、当教室で継続中の北海道端野町、壮瞥町の住民を対象とした疫学研究である「端野・壮 瞥町研究」から得られた知見として、「インスリン抵抗性の評価法と血圧との関連の検討」について発表させて いただきました。1991年・1992年に住民健診を受診した北海道端野町・壮瞥町住民を初年度の対象者とし、75g 経口糖負荷試験を行いました。初年度の対象者を10年間前向きに追跡し、新規の高血圧発症とインスリン抵抗性の関連性を検討しました。インスリン抵抗性の評価法として、空腹時血糖値・インスリン値のみで評価するHOMA-Rと、負荷後血糖値・インスリン値も含めて評価するMatsuda-DeFronzo indexを用いました。Matsuda-DeFronzo indexは現在報告されているインスリン抵抗性を評価する指標のなかでは、グルコースクランプ法と最も強い相関が得られるとされている指標のため、評価法として採用しました。
結果として、HOMA-Rでは明らかな相関関係を認めませんでしたが、Matsuda-DeFronzo indexでは新規高血圧発症との有意な相関関係を認め、インスリン抵抗性は将来の高血圧発症に寄与することが示唆され、高血圧発症の良好な予測因子となり得ることが示唆されるという結論が得られました。
発表後には、同様の研究をされている先生方からご質問やご助言をいただき、今後研究を進めていく上で貴重な経験をさせていただきました。
最後に、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。