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第54回日本臨床検査医学会学術集会参加報告
北海道大学病院 検査・輸血部 臨床検査技師
加賀 早苗さん
平成19年11月22日から4日間にわたり、大阪国際会議場において第54回日本臨床検査医学会学術集会が開催されました。第47回日本臨床化学会学術集会との連合大会でもあり、参加者およそ2,000名という大規模な学会でした。今回の学術集会では、「医療を活かす臨床検査」というメインテーマのもと、様々な分野における最新の臨床検査の研究発表がなされました。
その中で私は、「肥大型心筋症における左右両心室の収縮拡張機能評価:二次元スペックルトラッキング法による評価」というテーマで発表させていただきました。肥大型心筋症は、高血圧や弁膜症などの明らかな原因なしに左室あるいは右室が異常に肥大する疾患で、不均一な心室壁の肥大を特徴とし、典型例では心室中隔に強い肥大を示します。また、肥大のために心室壁は硬く拡がりにくくなります。この肥大型心筋症の診断や心筋の収縮・拡張機能の評価において心エコー検査は重要な役割を果たしています。
最近、二次元スペックルトラッキング法という新しい方法が開発され、心エコー検査の分野において、その有用性が示されつつあります。この方法は、心エコー画像上の白黒模様をフレームごとに自動的に追跡するもので、心筋の多数の部位でその動きを追跡することにより、心筋の伸び縮みの程度を表すストレイン、あるいは、心筋の伸び縮みの速度を表すストレインレートを同時に多数の箇所で計測することができます。従来のドプラを用いた計測法の欠点を克服し、超音波ビーム入射角度に依存しないため、これまで評価が難しかった右室心筋を含む、より広い範囲の心筋機能を分析することができると考えられます。
今回の発表では、この手法を用いて、肥大型心筋症の左右両心室の心筋ストレイン、ストレインレートを計測し、肥大の強い心室中隔だけではなく、広範囲の心室心筋で収縮・拡張機能が低下していることを報告しました。病理組織学的には、錯綜配列や線維化などの肥大型心筋症の心筋病変は、心室中隔だけではなく、左室自由壁や右室自由壁にも認められることが報告されており、今回、心室心筋に広く認められた収縮・拡張障害は、このような心筋病変を反映したものと考えられました。この方法を用いることにより、これまでは検出できなかった心筋の収縮・拡張異常を鋭敏に捉えうる可能性が示されました。本手法の普及により、肥大型心筋症をはじめとする各種心疾患における心筋機能異常の早期発見にも貢献できるのではないかと思います。
私は、日々、心エコー検査というマクロな視点で心臓をみていますが、本学会に参加し、様々な分野の臨床検査に触れ、別の視点から心臓の機能評価を学ぶことができ、大変勉強になりました。
この度の学会参加にあたり、研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に心より感謝申し上げます。