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第30回日本高血圧学会総会に参加して
札幌医科大学 第二内科 助教
赤坂 憲さん
平成19年10月25日から3日間、沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターにて、第30回日本高血圧学会総会が開催されました。本学会では「高血圧学の進歩をすべての人に─心血管病攻略の新しいステージへ─」をメインテーマに、国内外の様々な分野から多数の研究成果が発表されました。開催期間中の学会参加者は2,000人を超え、高血圧の最前線の研究をはじめメタボリックシンドロームや肥満、心血管病、慢性腎臓病などに関する演題が多数発表されました。コメディカルセッション・市民公開講座も盛況で、多くの人数での充実した議論が展開されており、大変勉強になりました。
10月26日には、本学会の会長を務められた琉球大学医学部の瀧下修一教授が「沖縄疫学研究と長寿沖縄の危機」と題した会長講演を行い、高血圧が肥満とともに沖縄の長寿にとって「危険因子」となっていることを発表されました。同教授は、「沖縄は長らく日本一の長寿県であったが、近年特に男性の平均寿命が短くなっている。その一因として、脳卒中発症率が低下せず、脳梗塞が増加していることが挙げられる。肥満、メタボリックシンドローム、慢性腎臓病、高血圧などが脳卒中の発症および進展に相互に関連していることが沖縄の疫学研究で示唆された。沖縄は肥満やメタボリックシンドロームが高率で、早期からの生活習慣の欧米化が影響している。これらのことは沖縄が全国を先駆けている可能性があり、長寿と短命が混在している沖縄の状況について遺伝と環境の両面から研究していく必要がある」と述べられました。
今回私は、私たちの教室で継続中の北海道端野町、壮瞥町住民を対象とした疫学研究である「端野・壮瞥町研究」から得られた新しい知見として、「尿中微量アルブミンと推定塩分摂取量の関連の検討」について発表させていただきました。2005年に住民検診を受診した北海道端野町・壮瞥町住民を対象に、早朝の尿を検査し、推定の24時間塩分摂取量と尿タンパクの一種である尿中微量アルブミンを計算して検討を行いました。その結果、北海道の一般的な住民では推定24時間塩分摂取量は男性で13.5g、女性で12.1gという数値が得られました。厚生労働省の調査によると、全国の平均値は男性12.4g、女性10.7gとのことですから、北海道は多い水準にあることがわかります。また端野町・壮瞥町の住民では、塩分摂取量と血圧値、塩分摂取量と尿中微量アルブミンが有意に相関していることがわかりました。塩分をとると血圧が上がることはよく知られていますが、今回の結果は、塩分が血圧のみならず腎臓にも影響して障害を引き起こす可能性があることを示すものとなりました。
発表後には、全国各地で同様の研究をされている先生方からご質問やご助言をいただきました。他大学の先生方と顔をつきあわせて議論することこそ、学会の醍醐味であり、今後研究を進めていく上で貴重な経験をさせていただきました。
最後に、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。