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第30回日本高血圧学会総会参加報告
北旭川医科大学 医学部看護学科 看護学講座・講師
升田 由美子さん
第30回日本高血圧学会総会は、10月25〜27日の3日間、沖縄県宜野湾市にある沖縄コンベンションセンターにおいて開催されました。南国沖縄でも、10月下旬であれば長袖を着始めるようですが、今年は例年よりも気温が高く、半袖の服でも十分な暖かさでした。そんな温暖な気候の中、学会は始まりました。
総会のテーマは「高血圧学の進歩をすべての人に―心血管病攻略の新しいステージへ―」であり、全国から医師及びコメディカルが多数集いました。
研究テーマは多岐にわたっており、現在話題のメタボリックシンドローム、動脈硬化、高血圧治療、栄養と高血圧、疫学などを話題としたシンポジウムが開催されました。また「高血圧に負けないために、あなたにできること」と題した市民公開講座も開かれ、多数の沖縄市民の皆さんが熱心に耳を傾けていました。「メタボリック症候群」は2006年の流行語大賞にもノミネートされた言葉であり、皆さんにもすっかりおなじみかと思います。「メタボ」な状態は、脳梗塞や虚血性心疾患のリスクを確実に上げるものであり、予防することがとても重要です。高血圧の治療ももちろん重要ですが、いかに食生活をはじめとした生活習慣を改善し、高血圧を予防していくのかが活発に検討されました。
私たちはコメディカルセッションにおいて、「医療系大学生における入学時の身体諸指標と食習慣の関連性−EAT-26の結果から−」について発表しました。EAT-26とは、本来神経性食欲不振症のスクリーニングに用いられてきた、摂食態度調査票のことです。報告内容は、将来医師・看護師となる医療系大学生は若年者であるにもかかわらず、血圧が高いもの、肥満傾向のものが高頻度(特に男子学生)に存在していること、それらの学生は食習慣そのものが偏っている可能性が考えられるといったものでした。
高血圧、肥満はいずれも加齢とともにその割合が増加するものですが、若年者、とくに健康と考えられる大学生集団においても生活習慣病を発症しつつあるものが多くいることに、驚きの声があがりました。一般大学生と比較して生活習慣病に関する知識を有している医療系大学生であっても、生活習慣病予備軍と考えられるものが多く存在していることは、憂慮すべき事態です。道民の皆さんの健康を担う医師・看護師自身がメタボリック症候群では、いただけません。大学生に対して、どのような健康指導が効果的なのか、今後とも検討する必要性を強く感じています。「メタボ」な大学生が増加しないように、大学教員である私たちも積極的に健康教育を行なうことの重要性を痛感しました。
最後になりますが、このたび、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。