NO.35 |
第11回日本心不全学会学術集会
北海道大学大学院 医学研究科 循環病態内科学講座・大学院生
大田 幸博さん
2007年9月9日より2日間の日程で第11回日本心不全学会学術集会が千葉県浦安市舞浜の東京ディズニーリゾートにあるヒルトン東京ベイで開催されました。本学会はその名が示す通り心臓の状態としての心不全とその関連した病態に関して基礎・臨床の立場より最新の知見から今後の展望に至るまで広く発表・討論が行われました。私は3年前に心移植患者に関する症例報告を行っており今回で2回目の参加になりましたが、前回はまだ研究を開始しておらず日程の都合などもあり自分の発表以外の学会の内容にまで目を向ける余裕がなかったのですが、今回は幸いにも両日ともに参加する機会が得られ、様々な体験ができましたので報告させていただきます。
9月とはいえ残暑厳しい東京を覚悟して上京したのですが、悪天候ではあったものの幸いにも気温だけでみれば非常にすごしやすい学会期間でした。おかげで元気に学会に参加でき暑さに弱い道産子としては非常に幸運でした。初日は参加のみであり存分に皆の発表内容を見て回ることができました。やはりプログラムだけではわからない実際の提示を見て初めてわかる参考にすべき知見なども発見でき、非常に有意義な時間を過ごすことができました。
2日目は自分の発表から始まりました。内容は心不全とその増悪因子でありかつ予後規定因子の1つに数えられるインスリン抵抗性の相関関係についての分子機構とその薬物的治療についての研究の成果を報告いたしました。簡潔に紹介させていただきますとマウスに心筋梗塞を作成し心不全を呈するモデル動物において、インスリンの上昇とインスリン刺激に反応して起こる血糖降下作用が減弱していることがわかりました。この結果よりインスリンに対して反応性の低下すなわちインスリン抵抗性があると考えました。次に糖代謝の主要な標的器官である骨格筋に注目してインスリン伝達経路を調べたところ、インスリン刺激を伝達する経路の途中が障害されていることがわかり、酸化ストレス生成を軽減する薬物を投与することでそこが一部改善することがわかりました。残念なことにまだ動物実験での結果が得られたに過ぎず、その過程についても不明な点がいくつも存在し1つの研究として完結させることはできませんでした。
しかし発表の際にも貴重な意見を賜り今後より詳細な検討を行うにあたっての助けとなりうる可能性を見出せました。また今までにも言われていたことではありますが危険因子の管理が重要なことを再認識する一助になったものと思われ非常に有意義であったと思っております。また他の報告にも現在進行中である研究と同様に、今回発表させていただいたのとは別の方向からのアプローチと方向性を同じくするものや、さらに詳細なメカニズムの一端に触れるものまで今後の自分の研究を発展させるに当たって参考になる発表も多数ありありがたい学会参加となりました。
最後になりますが、本学会への参加にあたり研究開発調査助成を賜りました財団法人北海道心臓協会に心より厚く御礼申し上げます。