★哲学者と豪傑

 ロシアのトイレでは、哲学者や数学者が、あるいは詩人が生まれるかも知れない。というのも、そこには長い長いメモ用紙が用意されているからだ。沈思黙考するのにふさわしい場所で、たっぷりメモ用紙があるのだから。

 日本では大抵、トイレットペーパーが備え付けられているが、ロシアのトイレではあったとしても、日本製の様にヤワな品物ではない。いわゆるわら半紙、西洋紙を切り裂いたような、メモ用紙にもできる紙だ。

 それで日本からトイレットペーパーを持って行くのを忘れた人は、しかたなくその「高級紙」で、お尻を拭かせていただくしかない。

 ただし、そんな「高級」な紙をトイレに流せば、すぐに水洗便所が詰まってしまうのは火を見るより明らかだ。その使用後の紙は、備え付けのバケツに入れなければならないことになっている。それがまた、トイレの臭う原因にもなる。

 ただ、私は不幸にしてその紙がその後どうなるのかは聞き損ねた。願わくば、例え環境保護に敵対することとなろうとも、その「ロシアのメモ用紙」が、再生紙として復活し、レストランの紙ナプキンや伝票なんぞに再利用されていないよう祈りたい。

 まぁ100%そういうことにはならないだろうけど。

                       

 ところで、いかに日本の優秀なトイレットペーパーを使ってもどうにもならないような代物を、ハバロフスク空港のトイレで見てしまった。それはなんと大根のような太さと長さの見事な一本ウンチ。何度、水洗の水を流しても流れないのだ。

 仮に流れても、下水道管を詰まらせるのではないかというほどの太さだった。

 ちなみに私の見たのは勿論男性トイレだったが、あるハバロフスクの在住女性は、女性トイレでもやはり大根のごとき一本ウンチを拝見したと言う。スラブ人(?)の肉体的神秘には驚嘆せざる得なかった。
 
 かつて中国では、豪傑は太いウンチをするという言い伝えがあった。武者は竹の筒に自らのウンチを詰めて「ところてん」のように押しだし、太いウンチに見せかけていたという。

 嘘かホントかわからない話だが、いずれにせよハバロフスクの極太の逸品は、中国の故事に詳しいロシア人の仕業というわけではないだろう。