ユジノサハリンスクホットライン 95年1月15日放送 
                          聞き手 FMいるか 織田亮子アナウンサー

O:ユジノサハリンスクホットライン。今回もお話を聞くのは、北海道新聞ユジノサハリンスク支局にいらっしゃいます田村晋一郎さんです。田村さんととお電話がつながっています。田村さん?

T:はい、田村です。

O:こんにちは。あけましておめでとうございます。

T:あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

O:よろしくお願いします。あのう、ロシアのクリスマスが1月7日という情報を聞いたのですけども、1月7日はどういう様子でしたか?

T:こちらでは、新しい教会が作られているところなんですけども。作りかけの教会の礼拝にたくさんの人々が集まりまして、長い列をつくりました。昔は宗教が公には推奨されていませんでしたが、今は教会での信仰がおおっぴらにできるという感じですね。それとあまり大きなクリスマスの行事ってやられていなかったんですけども、今年は子供の音楽会とか、人形劇が催されたり、公園に大きなクリスマスツリーが飾られたり、けっこうにぎやかでしたね。

O:じゃあ割とここ何年かにはみられなかった現象が、ちょっとずつ派手に行われるようになってきたんですね。ところで、やはり今の季節は寒いんでしょうね。

T:今年はそれほど雪は多くないんですけども、氷点下20度以下の日が何日も続いていますね。

O:はぁ、そうですか。

T:今日は、それほど寒くはないんですけど、雪が降っています。問題は部屋の中もそれほど温かくないんですよね。

O:暖房は?

T:暖房はありますが、資金不足の問題がありまして、集中暖房のスチームの温度があまり上がっていないんですね。

O:ふうーん

T:南向きの部屋とか、条件によっても違うんですけど、20度以下の部屋も珍しくないです。

O:いやぁこの真冬に20度以下の部屋だったら、かなり寒いですよね。

T:えぇ、日本人にとっては厳しいですね。

O:田村さんのお部屋は大丈夫ですか。

T:私の部屋は日本製の電気ストーブを入れていますし、部屋の一部が南に向いていますのでまぁほかの部屋よりは温かいなぁと思います。

O:はぁ〜けっこう寒さに耐え忍ぶユジノサハリンスクという感じなのでしょうか。

T:そうですね。寒さに強い人ならいんでしょうけども。

O:けっこうつらい冬をお過ごしの感じが伝わってくるんですが・・・

T:はははは

O:要するにエネルギーが不足していると思えばよろしいんでしょうか。

T:そうですね。(火力発電の原料となる石炭)資源が無いわけではないのですが、まず資金不足で炭鉱の生産性が上がっていません。さらに、その石炭不足を補うために大陸から石炭を輸送してもらうんですけども、輸送費を払えないとか、石炭の代金を払えないとか、お互いが借金でお互いの足を縛りあっているものですから、石炭の流通はうまく進まないんです。こちらの発電所も石炭不足で、暖房もうまくいかないし、電気も確保できないというありさまです。

O:そうすると停電というのもしょっちゅうですかぁ。

T:そうですね、計画的なんですけども、地域ごとに割り振りまして、すこしずつ停電します。朝晩よく停電になりますよ。

O:それはわざと電気の供給をストップするわけですか。

T:そうです。

O:はぁ〜だけど、電気がこないと、朝晩だったら暗い時間ですよね。

T:そうですね。時差が2時間あるものですから、こちらで(時計は)7時だとしても、(実際は)日本でいうと朝の5時にあたりますから、まっくらなんです。

O:そうですよねぇ。電気がないと料理もまぁ大変ですし、明かりもないと非常に不便な暮らしになりますね。ロウソクですかぁ。そうしますと。

T:ええ、もうロウソクしか頼るものがないです。

O:はぁ〜あ、例えば日本では電気がなくなるというのは考えられないくらいの電化生活なんですが、お仕事でワープロとかパソコンとか使ったりなさいますよね。それで電気がこないと、けっこう困りませんか。

T:はい、そのためにですね、わざわざ、日本から大きなバッテリーを用意しました。常時充電しながら、いざ停電になったら自動的にバッテリーから電気が供給されるようにしたんです。それと乾電池で使える小さな蛍光灯があるんですが、それも使っています。なんか停電対策をしないと、仕事もできなくなるんですよ。

O:そうですね。けっこういつ何時停電がおこるかわからないというか・・・お仕事柄ねぇ、打っていた原稿がパァッと消えてなくなったことありませんか。

T:そうなんですよ。

O:恐ろしいですよね。

T:ワープロを使えなくて、仕方なくて電話で吹き込んだこともありますけども。

O:電話は大丈夫なんですか。

T:電話はですね、わたしの事務所の地区が停電でも、国際電話の会社の電気が確保されてさえいたら大丈夫ですね。それでもたまにだめになることありますね。

O:はぁ〜なんかサバイバルな雰囲気が伝わってきますね。その〜エネルギー不足ということで、ガソリンの方も不足しているんですってね。

T:えぇ、北のほうで石油が生産されているんですが、残念ながら良い精製向上がないんですよ。わざわざ大陸へパイプラインで運びまして、で、精製されたものをまたサハリンへ送り返してきているんです。そのために値段も高くなっていますし、それといまの油田がだいぶかれつつあるために生産性が低いんです。どうしても石油不足になりがちで、特に冬の間は船の航行にも障害がありますし、色々石油不足の問題がでていますね。ガソリンスタンドをみなさん、探してですね、郊外の方まででかけたり、高い値段でガソリンを確保していますね。

O:はぁそうですかぁ。田村さんも車であちこち取材に行かれると思うんですが、ガス欠になって困るということありませんか。

T:色々探し回ってなんとかしのいでいますね。

O:はぁそうですかぁ。それから東方沖地震ですか、その影響で島民の皆さんが、ユジノサハリンスクも含めて本土のほうへ渡っているという話も聞くんですが、いかがでしょうか。

T:あのう、やはり正確な数字はわからないんですが、島の人の半分くらいでちゃったという話もあります。ユジノサハリンスクにも、一時的な疎開の人も含めてかなりの人が来ています。保養所とか、公的な宿泊施設に避難している方が多いですね。

O:ふ〜ん、というと一時的に避難生活を送っていらっしゃるのでしょうか。

T:あのう、一時的になるのか、それが半永久的になるのか、自分たちでもなかなか判断できないみたいですね。保証金の問題とか、新しい引越し先で仕事を確保できるか色々な問題がありますね。気持ちとしては、移住できるのであれば、大陸へ行きたいと思っている方は多いですね。逆に移住しないのであれば島に残りたいと、極端に分かれていますね。なかなかちょっと自分たちで自分たちの未来、将来について計画立てられない。とりあえず、避難しているって感じですね。

O:結構不安な生活を送っているのですね。島民の方たちもそうですが、ユジノサハリンスクの方たちも、そういう島民の方が避難しておられると、生活が変わってきますものね。

T:はい、もともと不動産関係は値上がり傾向なのです。そこへ人が増えてきていますから、心理的な要素もあるんですが、アパートの需要と供給のバランスが崩れてきていまして、この一年間で6倍から8倍くらい値上がりしています。

O:はぁそうですか。それは家賃というか・・・

T:買取の値段ですね。

O:6倍から8倍?この一年でですか?

T:給料は、3倍くらいにしか上がっていませんから、普通の人はなかなか家を買うということができないですね。

O:一応お給料も3倍くらい上がっているんですけども、それ以上に?

T:えぇ、それ以上にあがっていますから。

O:はぁ〜そうですかぁ。はぁ、なんですか、エネルギーも不足している、そこへもってきて天災ですけど、地震があって、その影響もユジノサハリンスクもでてきているんですね。

T:ロシアの人たちはたくましいですからねぇ、日本人だったらたぶん右往左往している中でもですね、まぁある程度は厳しい現実を受け入れながら、人生をある程度は楽しんでいるという風に見受けます。

O:それじゃ、割とおおらかに暮らしていらっしゃるんでしょうか。

T:えぇ、もちろん現実は厳しいという認識はもっているんですが、たくましく生きているということですね。

O:はぁそうですか。おおらかさっていうか、たくましさってのは見習いたいですよね。はい、では来月もいろんな情報をお伝えください。

T:はい。

O:どうもありがとうございました。失礼いたします。ユジノサハリンスクホットライン、北海道新聞ユジノサハリンスク支局にいらっしゃる田村晋一郎さんとお電話でお話をいたしました。