田中 「日本政治を切る」というテーマで話し合うわけですが、象徴的な出来事に宮城県知事選挙がありました。

 山口 浅野史郎知事は全国に先駆け、全面的情報公開をトップダウンで行った。住民の目線で行政をとらえ役所の仕組みを変える今までにない姿勢が、圧倒的支持を得ました。こういうところから日本の政治が変わっていくと思います。

 田中 地方へいくほど強まる行政・中央・公共事業依存に立ちはだかった。私は、細川政権を生んだエネルギーが拡大再生産されていると見ています。

 山口 小さな自治体でも、住民の感覚とエネルギーを結集できる人物が出れば、政党・団体の支持関係を度外視した選挙結果が最近は多い。小沢一郎さん(新進党党首)が元建設官僚を立て、市町村長、業界団体を締め付けても、面従腹背があった。政党の動員力が 低下し、個人が判断するのは都市・農村を問わない変化で、今後日本政治の縮図になると思います。

 田中 浅野さんは言うことすることが明快だ。例えば「ハコ物は必要ない」とか具体的発言、行動、実績で同志を募る。中央政治は当面の問題に明確な判断を示さないことが多過ぎます。

 山口 北海道にも重い教訓をもっています。リーダーが何を考え動くべきか。情報を住民と共有する姿勢です。住民と役所の中のどちらを向くのが大事か、宮城県民が端的に示しました。

 田中 情報公開に消極的な知事はこれからは当選しません。

 山口 今のせりふは堀達也知事にぜひ言ってほしい。

 田中 リーダーが、有権者個人の中のどこを引き出すかです。宮城の自民党支持者でも「宮城がけん引力になって自治体を変えよう」という思いは強かったでしょう。北海道も国政選挙の度に二十万−三十万の票が浮動票としてユーロダラーのように動く。特に札幌のそういう浮動票は先駆的な役割を果たしていると思います。人、方向を得たら国政を変えるエネルギーが北海道でも充満しています。山口先生はロンドンに留学されましたが、浅野さんとブレア英首相を比較してどうですか。

 山口 五月に地滑り的政権交代がありました。ブレア氏は労働党の伝統的左翼を制圧してヘゲモニーを握り、金融、地方分権など政策転換を主導した。新鮮なリーダーに改革実行を期待する点で共通しています。政治を変えるのはある程度の時間の幅で考えないといけないと感じました。