本展では四つのテーマのもとに、20世紀の巨匠の作品を紹介します。
ここでそのさわりをご紹介しましょう。 |
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人間 ピカソ「肘掛椅子にすわる女」(図版A)は、ちょっと見ただけではどこが顔なのか判然としません。真ん中の輪が白い歯を見せた口で、閉じた目、上を向いた鼻の穴、髪の毛などもあることが、じっくり見るうちにわかってきます。ピカソが人体を大きくデフォルメ(変形)することに取り組んでいた時期の作品です。 一方、シーガル<ガートルード(二重の肖像)>(図版B)では、本人から直接かたどられた石膏像と日常を記録した映像によって、平凡な一女性のすがたを通して、現代の普遍的な人間像が表現されています。このコーナーでは20世紀美術における多様な人間表現をお楽しみいただけるでしょう。 |
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図版A
パブロ・ピカソ「肘掛け椅子にすわる女」 Pablo Picasso "Woman Sitting in an Armchair" 1927年 (c)Succession Picassso,paris&BCF,Tokyo,2000 |
図版B
ジョージ・シーガル「ガートルード(二重の肖像)」 George Segal"Gertrude(Double Portrait)" 1972年 (c)George Segal/VAGA,New York/SPDA,Tokyo,2000 |
自然 モネ<睡蓮>(図版C)は、睡蓮が浮かぶ自邸の池を描いた連作の1点です。おそらくは夕方に近い時刻の黄金色の光の中に描き出された池は、自然と人間が幸福に共存する世界を象徴するかのようです。しかしその後の20世紀は、工業化と消費社会の進展の中で、自然が破壊され、環境がどんどん人工的になっていく過程でした。 エルンストは<石化せる森>(図版D)で、廃墟としての森を描き、物質文明がたどるであろう行く末を、終末的世界として表現しました。またウォーホルの<花>(図版E)は、他人が雑誌に投稿した写真を流用したものです。自然はもはや直接体験するものではなく、情報として二次的に体験され、消費されるものであることを物語っているかのようです。 |
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図版C
クロード・モネ「睡蓮」 Claude Monet "Waterlilies" 1907年 |
図版D
マックス・エルンスト「石化せる森」 Max Ernst "Petrified Forest" 1927年 (c)ADAGP,Paris&SPDA,Tokyo,2000 |
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図版E アンディ・ウォーホル「花」 Andy Warhol"Flowers" 1970年 (c)2000 The Andy Wahol Foundation for the Visual Arts/ARS,N.Y./SPDA,Tokyo |