ストレスの影響受けやすい腸/食生活や精神面の改善が第一

【質問】

 数カ月前から急におならが出るようになって困っています。今まで通りの生活を送ってお
り、食事も普通にとっています。外に出てもおならが出るのではないかと思うと、もう恥ずかし
くてたまりません。(大阪府 59歳の女性)

【回答】

 おならの正体は腸内のガスで、その発生の原因は大きく三つに分けられます。

 第一の原因は食事やだ液をのみこんだときに一緒に口から入ってしまう空気で、大腸に達
した成分は主に窒素なのでにおいはありません。これが腸内ガスの約70%を占めます。

 第二の原因は食事(イモ・豆類など)由来の成分が発酵して生じるガスで、主に炭酸ガスや
メタンから成り、あまり強くはにおいません。一方、小腸で十分消化されなかったタンパク質
が腐敗して発生したガスの場合はインドール、スカトール、アンモニア、硫化水素などが主成
分で、悪臭がします。

 第三の原因は血液中から腸のなかに出てきたガスで、量的には多くありません。

 では、どんな時におならが増えるのでしょう。内科診療の場で一番多いのは、細かいことま
で神経を使いすぎる方、寝不足、過労、精神的に悩みを持つ方などに生じやすい「過敏性腸
症候群」と呼ばれる疾患です。

 腸の動きは「心の鏡」と言われるほど、ストレスなどの心理的な要因を非常に強く受けま
す。その結果、腸の動き、分泌などの異常をきたし、おならや下痢、便秘などを生じます。腸
のガスのみが著しく増え、下痢や便秘を伴わない「ガス優位型」もあります。

 また、このような方々によくみられますが、無意識に大量の空気をのみ込んでしまう「空気
嚥下(えんげ)症」が強いと、げっぷやおなら、おなかの膨満感といった症状がでます。以上の
ような症状は、急に出始めることも、慢性的に経過することもあります。

 治療方法は何より規則正しい食事と、リラックスした生活を心がけることです。チューインガ
ムや喫煙、かみ合わせの良くない義歯、丸のみ、早食いの習慣、香辛料、炭酸飲料やアル
コール(特にビール)の摂取なども原因となることがあります。

 また、長時間前かがみで仕事をしたり、ガードル・コルセットなどでおなかを圧迫しすぎて
も、腸にガスがたまりやすくなります。抗生物質や、ある種の薬剤もガスを増やします。食事
は食物性繊維(セルロース)の多い、イモ・豆類を控えたり、脂っこいものを避けることも大事
です。特に悪臭が強いときは、腐敗ガスの原因となるタンパク質の制限も必要です。以上の
ことに注意しても改善しないときは、整腸剤、ガスを駆除する薬剤、精神安定剤なども併用し
ます。

 ご相談の女性の場合、「おならは恥ずかしい」「してはいけない」と強く思うあまり、緊張して
さらに悪循環に陥って苦しんでおられる可能性もあります。ここに記した薬物を処方してもら
うことにより、早く悪循環を断ち切るのも有効かもしれません。(成城加々美クリニック 加々
美明彦院長)

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