ちょっと病気?だから健康!(50)

わしざき先生の診療日誌

ワインは知能指数を高める?!

 「わしざき先生、今年のセンターの忘年会はワインのおいしいお店にしましたからね」。保健婦のYさんがう
れしそうに報告してきました。十一月にはボージョレ・ヌーボーも解禁され、この時期、忘年会にクリスマス・
パーティーにとワインを楽しむ機会が増えてきました。

 赤ワインといえば、動脈硬化やアルツハイマー病の予防に効果があるといわれるポリフェノールを多く含ん
でいることから、健康的な飲み物として、ひところブームにもなりましたが、この考え方が広まったのは一九
九〇年代の初めのこと。じつは、とても最近の話なのです。

 赤ワインの研究は、欧米の研究者が「フレンチ・パラドックス(フランスでの不可解な現象)」に気づいたこと
に始まるといわれています。「フレンチ・パラドックス」とは、フランス人は、アメリカ人と同じくらい脂肪の多い
食事をしているにもかかわらず、心筋梗塞(こうそく)の発生率がかなり低いという現象のことです。数回の大
規模な調査から、赤ワインを飲むことと心筋梗塞・脳卒中による死亡率の低さには関連があるというデータ
が明らかになりました。

 ヨーロッパでは「アルコール摂取量と死亡率」という研究も発表されていて、それによると、まったく酒を飲ま
ない人の死亡率を一とした場合、ワインを三〜五杯飲む人の相対的な死亡率は〇・五程度、ビールを毎日
適量飲んでいる人も〇・八〜〇・九程度という結果が出ています。

 つまり、適量のワインやビールは飲まないより飲んだほうがいいということですね。

 さらに、ワインに関しては最近、デンマークの研究者が「ワインを飲む人は、より健康的であると同時にビ
ールを飲む人たちよりも知能指数が高めで、教育程度も高く、社会経済的により高い地位にある」というユ
ニークな研究を報告しています。

 ただし、ワインを飲んだからといって社会的地位が上がるわけではありませんから、くれぐれも誤解しない
ように…。

 (伊勢丹健康管理センター所長・21健医総研主任研究員 鷲崎誠)