専門医の治療で回復

 【質問】派遣社員をしていましたが、三十六歳になったとたんに仕事が来なくなり、いろいろ探しましたが見つかりませ
ん。鬱(うつ)のようになり、心療内科の先生には「鬱症状」といわれ、抗鬱薬の「ルボックス」や睡眠薬「ユーロジン」など
を服用しています。四月下旬には呼吸困難や動悸(どうき)、めまいがしました。今はそのような発作はありませんが、長
時間の外出ができません。いつも不安で生活はつまらなく、仕事がなくて焦っています。これは治るのでしょうか。(東京
都、36歳無職女性)

 【解答】鬱症状とは、抑鬱気分、興味と喜びの喪失、活力の減退による易(い)疲労感などを典型的症状とします。他
の症状としては、集中力と注意力の減退、自己評価と自信の低下、罪責感と無価値感、将来への悲観的な見方、自
傷・自殺の観念や行為、睡眠障害、食欲不振などです。治るのかとのご相談ですが、ほとんどの方は専門医の治療介
入により、いずれは治ります。この方の四月の発作は、自律神経性過活動(呼吸促迫、動悸や頻脈、めまい、発汗、口
渇など)によるパニック発作(急性不安発作)と思われます。長時間外出する際には、外出前に抗不安薬を予防的に服用
したり、外出時にお守りとして持ち歩くことを勧めます。今服用されている薬にはほぼ問題がないと思います。

 さて、鬱症状ですが、二週間以上続けば鬱病ということになります。鬱病の罹患(りかん)率は大変高く、日本でも七人
に一人は罹(かか)るという調査報告が出ています。近年は軽症例も増加し、実数はもっと多いと思われます。このよう
な状況ですので、思い当たる方は偏見なく気軽に専門医に相談されることが大事です。鬱による集中力や判断力の低
下のため、働くのが困難になることもありますので、できるだけ軽症の早いうちに治療介入し本来の自分を取り戻して
いただくことが、本人ひいては社会の利益につながります。

 鬱病の研究も進み、特にストレスと鬱病との関係についての研究が注目されています。ストレスはだれにでもありま
すが、ある一定の度合いを超えると耐えられないことがしばしばあります。そのようなストレス下では脳の神経細胞内に
変化がおき、抗鬱薬は細胞機能の改善をすることにより、鬱状態の回復をもたらすものではないかという仮説がありま
す。治療薬も進歩し、平成十一年よりSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、その後SNRI(セロトニン・ノルアドレ
ナリン再取り込み阻害薬)といわれる新しいタイプの治療薬も国内で認可され、これにより軽症の治療がスムーズにな
ってきています。

 最後に、鬱病はやはり薬物療法やカウンセリングの面でたけた専門医(心療内科医、精神科医)の受診を勧めます。
受診される場合にはご家族も付き添いをされた方がよいです。病気の不明な点や接し方等医師に相談されるとよいと
思います。