【「眠りたいけど眠れない」出版】
意外に多い成人の睡眠障害 昼寝取り入れライフスタイル改善を
なかなか寝付けない、日中もなんだか眠たい…睡眠に関する悩みを抱えている人は少なくない。成
人の約二割が睡眠障害に悩んでいるというデータもある。成人だけでなく、幼児や高齢者にも快適な
睡眠をとることが大きな課題となっているのが現状だ。このほど出版された『眠りたいけど眠れない』
(昭和堂)を編集した広島大学総合科学部の堀忠雄教授(写真、心理学)に、睡眠に関する研究などに
ついて聞いた。(岸本佳子)
「アメリカに比べればまだまだですが、日本でもこの十年間に、睡眠に関する研究が進んできました」
と堀教授。『眠りたいけど眠れない』に原稿を寄せているのは、国内の第一線で睡眠の研究を行ってい
る心理学者や精神科医ら九人。子供や高齢者の睡眠問題を解き明かし、睡眠障害の予防や治療法
についても紹介している。
たとえば就学前の幼児の睡眠について、長い昼寝が夜更かしに影響しているのではないか、とする
説が述べられている。保育園児は幼稚園児に比べて、夜間の睡眠時間が短い。夜更かしが多く、睡
眠不足感が強い、という。これは、保育園では三歳を過ぎても午後に一時間半から二時間の長い昼寝
をとっていることが原因として考えられる、という。
執筆した福田一彦・福島大学教育学部教授は「少なくとも子供が五、六歳に達したら、午後の長い昼
寝のあり方を考え直すべき」と提案する。
また、平成七年から行われている広島大学総合科学部の「長寿科学研究プロジェクト」の研究につ
いても触れている。
それによると、健康で意欲的な高齢者ほど、夜の睡眠が良好に確保され、昼食後に三十分ほどの昼
寝をとっていることがわかっている、という。短時間の昼寝は、高齢者の脳機能によい影響を与え、さ
らに高血圧の人の場合、血圧を下げる効果も認められた、と報告されている。
それでは、「眠れない」と人はどうなるのだろうか。「まず、とても不安になります。体がだるくなり、食
欲も落ちる。感情もコントロールしにくくなる。しつこくなる人もいます」と堀教授。とりわけ女性の場合、
眠れないことへのショックが大きいという。
女性は閉経後に女性ホルモンの分泌が減り、いびきをかくようになったり、夜に目が覚めるようにな
ることがある。ショックの大きさからひどい不眠に陥ることもある。こんな場合にはライフスタイルに短い
昼寝を取り入れながら、睡眠時間を立て直し、睡眠に対する自信を回復することが効果的という。
先進諸国では、睡眠時間を削って仕事に励むことをよしとする傾向があるが、堀教授は「短い睡眠時
間でがんばれることがすばらしい、というのは大きな間違い。きちんと睡眠をとってすっきりとした頭で
問題に向かうことが大切」と強調する。
睡眠時間が十時間以上、または四時間以下の人は死亡率が高い、というデータもあり、「やはり人
間にとって六時間から九時間の睡眠は必要。決まった時間に寝て決まった時間に起きてほしい」と話
している。