【後頭神経痛】

後頭部に片側性の発作痛

さまざまな目の症状も誘発

 緊張型頭痛と区別しなければならない疾患に、後頭神経痛がある。後頭部の下方から上方、または耳の後部に向け
て放射する痛みが生じる。頭皮の表面に痛みがあるように感じ、ひどいときは髪にくしが触れただけで痛みが誘発され
る。緊張型頭痛は頭部全体が締めつけられるような持続痛が特徴だが、後頭神経痛の多くは後頭部に限られる片側
性の発作痛である。まったく無症状のときもある。

 後頭部から耳の後部の知覚は大後頭神経、小後頭神経、大耳介神経などによって伝えられるが、このうち大後頭神
経は第二番目の頸(けい)神経の枝で、他の二つの神経は頸神経叢(そう)から出る。大後頭神経は外後頭隆起(後頭骨
下部中央の骨のでっぱり)の外側二・五センチ、小後頭神経はさらにその外側二・五センチから上に伸びているため、下
方から放射されるように痛みが走る。診断の際は、これらの神経の出口を圧迫して、痛みの再現をみることが重要であ
る。

 後頭神経痛は、原因不明の特発性と二次性に分けられるが、特発性のものは極めてまれである。二次性のものは腫
瘍(しゅよう)、炎症、外傷、痙性(けいせい)斜頸、変形性頸椎(けいつい)症、頸椎椎間板(ついかんばん)ヘルニアなどに
よって引き起こされ、首の運動、咳(せき)、くしゃみで傷みの増強をみることが多い。

 なお、後頭部に痛みがある場合に、目の奥の痛み、目の疲れ、まぶしさを同時に自覚することがあるが、これは大後
頭神経三叉(ささん)神経症候群(great occipital trigeminal syndrome)である。一般的には、その頭文字をとって
GOTS(ゴッツ)と呼んでいる。このGOTSは、後頭神経の興奮が、三叉神経の第一番目の枝に伝搬して(cervico trig
eminal relay)、さまざまな目の症状を引き起こすのである。後頭神経痛だけでも十分につらいが、目の奥まで痛くなる
のは、まさに「弱り目にたたり目」と言えよう。

 ペインクリニックでは、後頭神経痛に対しては後頭神経ブロック(局所麻酔薬と少量のステロイド薬を注入する)、GOT
Sには眼窩(がんか)上神経ブロックを追加して行っている。

 また、「風池(ふうち)」(大後頭神経の出口に一致する)というツボへの鍼(はり)治療も有効である。