◆慢性疲労症候群の解明に道 阪大講師ら

セロトニン低下が一因

 原因不明の激しい疲れや倦怠(けんたい)感が長期間続く原因不明の「慢性疲労症候群」(CFS)の患者は、体を活性化させる
神経伝達物質「セロトニン」の合成が脳で低下していることを、文部科学省疲労研究班の倉恒弘彦・大阪大講師(内科学)とスウ
ェーデンのウプサラ大などの共同研究チームが二十三日までに突き止めた。

 いまだに謎が多いCFSの主要な症状である思考力や気力の低下、鬱(うつ)などの発症プロセスの解明に結び付く成果。セロ
トニンの濃度を高める薬剤が一部の患者に有効であることも既に確かめており、新たな治療法開発も期待できそうだ。

 成果は今月、スウェーデンで開かれた国際疲労会議で発表した。

 CFSは一九八〇年代に米国で多発し、研究が盛んになった比較的新しい病気。原因ははっきりせず、特効薬も見つかってい
ない。

 研究チームは、CFSと症状が似る鬱病の患者で、セロトニンの異常が起こっていることに注目。セロトニンの“原材料”となる物
質を、CFS患者六人と健康な八人に注射し、合成の活発さをこの物質の取り込み具合で調べた結果、CFS患者はセロトニンが
できる脳の前頭葉への取り込みが健康な人に比べて少なく、合成されにくくなっていることが分かった。

 倉恒講師らは、CFSの患者三十九人にセロトニンの濃度を高める抗鬱剤の一種を投与。十一人は吐き気などの副作用が出
たため使用を中止したが、二カ月間で十人の症状が改善し、うち二人は、完全に治癒したという。