眠りたいのに眠れない…そんな不眠の悩みをかかえる人のために、エスエス製薬は先月、一過性の不眠を解消する睡眠改善薬「ドリエル」(六錠千円、十二錠千九百円)を発売した。生薬を除いて、睡眠改善薬では初のOTC薬(医師の処方箋(せん)なしに薬局で購入できる薬)だったこともあり、全国二万店の薬局・薬店から予約注文があり、すでに年間六億円の売り上げが見込まれているという。
同社の北史男・生産本部長は「あまりに反響が大きくてびっくりしている。ドリエルはストレスや心配事があってなかなか眠れないときに、自然な眠りを手助けする薬。夜間の睡眠を確保することで昼間の生活を充実させるという意味で、生活改善薬ともいえる」と話す。
ドリエルの主成分である塩酸ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン剤。くしゃみ、鼻水、かゆみなどを抑える薬で、風邪薬や花粉症の薬に入っていることが多い。そう、風邪薬の注意書きにある「強い眠気」「だるさ」などの症状は、この抗ヒスタミン剤によるものだ。
風邪薬では副作用の症状を、主作用として利用したのがドリエルというわけだ。医療用の睡眠薬ほど強い効果はないが、ソフトな眠りを誘い自然な眠りの手助けをするという。
同様の成分の薬は欧米ではすでに十三年前からOTC薬として販売されており、米国では百五十億円市場を形成している。
今回日本での販売が認められたのは、自分の健康は自分で守るためにOTC薬を活用することを提言した厚生労働省の検討会の報告を受けてのものという。
OTC薬活用推進の背景には、増え続ける医療費を抑制したいという国の思惑もある。つまり、医師の診察を受けるほどではない「ちょっと眠れない」くらいの人は、自分で薬を買って体調をいい状態にもっていきなさいということだ。患者にとっても医療機関へ行く手間が省けるだけでなく、これまで「病院へ行くほどではないし…」とがまんしていた症状を、薬局の薬で解消できることになる。
ただし、ドリエルは一時的な不眠症状(数日間)を緩和する薬なので、日常的に不眠が続いている場合は、医師に相談する必要がある。また、薬に頼る前に、昼間運動をしたり、夕食後カフェインをとらないなど、快適な睡眠をとるための工夫をしてみることも大切だ。