◆【100歳時代】病気に克つ! 高血圧(4)
長寿への第一歩 まず血圧を知る

 一筋縄では治療できない高血圧。とくに血圧の調整機能が低下している高齢者には、慎重な対処が必要となる。

 高血圧の患者は四十代から増加し、六十五歳以上の年代では約六割が高血圧と判定される。高齢者に患者が多いのは、長年の生活習慣の影響や動脈硬化、そして血圧を調整する自律神経の機能低下の問題もある。

 自律神経の働きが悪くなると、夜間に血圧が下がりにくくなったり、その逆の場合など血圧が不安定になるほか、さまざまな症状が現れることもある。

 例えば「起立性低血圧」だ。すばやく立ち上った際に立ちくらみを起こす症状で、急激な動作など身体への刺激が血圧を大きく変動させる。

 このような症状がある場合、脳の血流に影響するだけに、高血圧の治療では慎重に血圧を下げることが重要になる。

 「急激に血圧を下げると、脳梗塞(こうそく)を引き起こす危険がある」と荻原俊男・大阪大学教授は警告する。「若い人が二、三カ月で下げるのなら、年をとった人は半年で下げればいい。急に血圧を下げようとしなくていい」と話す。段階的で長期にわたる治療が不可欠なのだ。

 その一方、中、軽度の高血圧では、投薬治療以外で血圧を下げる方法もある。そのひとつが「運動療法」だ。運動療法は、ウオーキングやジョギング、水泳など有酸素運動が基本となる。

 世界保健機関(WHO)のガイドラインなどでは、毎日三十?四十五分の早歩き(ウオーキング)を二カ月以上続けた場合、最高血圧で20ミリHg以上、血圧を下げることが可能という。

 散歩やラジオ体操なども心臓に負担をかけずに心肺機能を高めて血行を促進し、高血圧の一因である肥満の解消にも有効とされる。ただし、一日三十分以上の運動を毎日継続することが重要で、医師の診断を受けて無理な運動はしないことが前提になる。とくに高齢者は張り切り過ぎないように注意する必要がある。

 「血圧が低ければ、平均寿命を生きることが期待できる」(荻原教授)というように、血圧を正常に保つことが長寿の条件であるのは間違いない。しかし、製薬会社のデータでは、国内で約三千三百万人と推定される高血圧患者のうち実際に治療を受けているのは約七百万人に過ぎない。

 直接、重大な症状が現れない高血圧だけに、まず何よりも自分の血圧を知り、適切に対処することが、長寿への第一歩になる。